ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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おばあさんの声
そんな事件もあって、公園のプールに行くのが少し嫌になってしまい、久しぶりに年間会員になっているスポーツ・クラブの室内プールのファミリー・タイムに行くことにした。ここのプールは一人が会員だと、週末にその家族がタダでプールを利用できる時間がある。安い年会費なので、もう5年間会員を続けているが、週末に家族で行くことも良くあった。

今日はベンも一緒に行くことになり、興奮気味に手を叩きながら前を歩いている。ベンはここのクラブのプールが好きで、3、4年くらい前によく行っていた。そしてある時一度、大変なことになってしまい、通りすがりの人に助けてもらったことを思い出す。

ここのプールは50メートル程の小さめのものだが、ファミリー・タイムとなると、子供とその親で程よく込み合い楽しい空気に包まれた雰囲気になる。ところがある冬の日、連れてゆくと誰もプールに居ない日があった。ベンは以前に行った時のその雰囲気を覚えていたようで、「Where is people ?」「No children in a pool」と言い出してパニックになってしまったのだ。

「何故こんな事で」と思うような出来事で、自閉症の子はパニックになってしまう。こんな時は親である僕でさえも、本当に理解をするのに苦しみ、やるせない気持ちになってしまう瞬間でもある。「ベン、何で人が居ないのがいけないんだい?空いていていいじゃないか?きっともうすぐ誰か来るよ!」と声をかけても全く受け付けない。パニックになってしまう時にはどんなに肯定的な事を言っても単なる雑音にしかならないようで、まるでアリ地獄のように混乱のツボにはまっていってしまう。そして、その混乱を表現する声や体はまるで小さく共振していた音がだんだんと共振を重ねて大きくなってゆくかのようにエスカレートしてゆく。

収まりがつかないので、プールには入らずスポーツ・クラブを出た。ところが、これですんなりと収まるかというと、そんなことはない。問題を取り除けば済んでしまうという簡単なものではなく、今度はプールに入れなかったことを怒り出すわけだ。普通の場合なら、「そんなわがまま言うんじゃありません」というケースなのだが、これはちょっとわがままというのとは違うわけで、理由と結果がぐちゃぐちゃになってしまったような状態になっているようにも思える。

なだめるすべを失ってしまい、途方に暮れる僕を見ていたおばあさんが話かけてきた。スポーツ・クラブの横の建物はシニア・センター(老人ホーム)で、ベンはベンチなどの置いてあるセンター前の広場でかんしゃくを起こしていたからだ。

おばあさんは、にこにこしながら「Hi honey, What’s wrong with you?」(あらあらあなた、どうしたのかしら)とベンに話かける。「Don’t cry that much that makes me cry」(そんなに泣きなさんな、私まで泣きたくなるわ)と落ち着き払ったいくつかの言葉を投げかける。するとどうだろう、ひっくり返って泣いていたべンはだんだんと泣くのをやめて、家に戻る為に歩き出す体勢まで持ち直しているではないか。これには一緒に居たベンの弟も驚いて「It’s like a magic !」と驚嘆していた。

お礼もそこそこに、歩ける体勢のうちにとベンを家まで連れて帰ったのだが、今でもプールに行く時にあの角を曲がると思い出す、あのおばあさん。あの落ち着き払った声と態度がベンの落ち着きを取り戻すのに必要だったのだ。ベンが泣き続けていたのは不安で必死になっていた僕の電波が伝わっていたのかもしれない。
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by gakuandben | 2006-07-25 12:08 | 自閉症に関して
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