ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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特定不能の男
一年ごとの定期検診にベンを連れて行った。ベンが生まれてからずっとお世話になっている小児科医のドクター・ラザルスはNYでもトップランクの評価で、家から近かったこともありずっと通い続けている。

こちらでは、良い医者になるほど保険を受け付けないということが多くて、ドクター・ラザルスはその代表格。毎年ベスト・ドクターとして雑誌に紹介され、別に保険を受け付けなくても来る患者は来るという姿勢。保険はドクターの方の負担になるので一切受け付けずに、患者側が、領収書をもとに各自保険会社へ請求するという事になる。

また何故そこまで超高級なお医者様にベンが見てもらうことになったのかという経緯は、当時の日本人コミュニティで妻の知り合いである駐在員だった方の紹介だった。

何はともあれ、ハイ・エンドな医療環境にあることは有り難い限りで、後から来る一回の検診と予防注射で300ドルを超える請求に頭をかかえることになるという部分を除けば、ずっと同じお医者様に見てもらうというのは何とも心強い。

特にベンのような障害のある場合には尚更、生まれた時からのヒストリーを把握していてくれるという点でも大切な存在なのだ。

日本で生まれたベンを始めて連れて行ったのは生まれて6ヶ月程の頃。英語を正確に聞き取るのも苦労している僕らにゆっくりと、1つ1つ確認するように喋ってくださり、プロフェッショナルなキャリアを持つ人独特のオーラが言葉の壁を超えて包み込むようだった。

そんなラザルス先生は、僕らがベンの言葉が遅い事を伝えても「それは日本語と英語の環境が混在している環境の子供の発達では良くあることです」という意見で、4歳になって保育園での明らかに違った行動が見られるまでは専門の病院には行くことは無かった。

確かにベンはよく笑い、幼児期に見られる典型的な自閉症の症状ではなかったのだが、保育園という始めて社会性が必要とされる場に出て、はっきりと問題が浮かび上がったと言えるだろう。

先生の紹介で専門医に行く事になり、ベンは正式に自閉症と診断された。正確にはPervasive Developmental Disorder-Not Otherwise Specifiedというもの凄く長い診断名で、PDD/Nosと略して呼ばれる。日本語訳は「特定不能な公汎性発達障害」

紹介していただいたお医者様も、さすがにその道の権威の先生で、これまたトップクラスの診断をしていただいたという事になる。いくつかのテストをして先生の回答を待つのだが、先生は一言「He has it」と強く押し切るように言ったのを覚えている。もちろんその「it」は自閉症の事で、「それは、この先どういう症状になって出てくるのか?重い症状では無いが、言葉が普通に喋れるようになるとかそういうことは私にもわかりません」と続けた。

ただ先生が明確におっしゃったのは、「普通の学校教育を受けても、全く意味がありませんよ。彼なりの理解の仕方に合わせた専門の教育をする必要があります」という事で、今後どの程度の知能レベルが得られるかなどの質問には「I don't know」という返事しか帰って来なかった。診断名の最後につくNot Otherwise Specifiedというのもミステリアスな障害を感じさせる。

トップ・ドクター達にさえも、わかりませんと言わしめる障害を持った自分の息子に対し、大きな暗闇に放り出されたようなよりどころの無い不安が押し寄せた。

そしておよそ10年が経った。10年の間にドクター・ラザルスには必ず年に一度は健康診断のためにお会いする。ベンの多動がひどかった時には落ち着かせるための薬を処方してもらうために投薬の専門医にかかったこともあった。その場合も、専門医にかかる場合は必ず一般医(プライマリー・ドクター)からの送り状が必要なのでラザルス先生を通すことになる。

10年経って思ったのは、未だ解明されない点の多いこの障害にはカスタム・メイドな対応が必要だという事。意見は意見として参考になり、他での事例も手助けではあるけれども、それが全てベンに当てはまるのではなく、その一部分でも見合ったものがあれば大きな手がかりになる。

他の自閉症児の話を聞いていても、いくつかの共通点はあるものの、確実にそれぞれ違った問題を抱えている。それはもう、人がそれぞれに違った性格を持っているのと同じレベルの違い方だろう。そして、それを一番知っているのは病院の先生方ではなく、親である僕らなのだった。

今回の検診では最後にベンの性徴についての話になった。13歳といえば、自分の経験からもそういう時期にある。

別れ際に「ベン、君のことは赤ちゃんの時から知っているんだ。よく健康でここまで大きくなったね。」と声をかけるラザルス先生。僕は本当に大きくなったベンを見て、始めてこのオフィスに来た頃の赤ちゃんのベンを思い出しながら「性徴の話が出来るまでになって感激です」と答えた。




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by gakuandben | 2007-01-21 13:55 | 自閉症に関して
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