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ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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音葉の力
先学期に続き、今年もベンの学校にベースを使ったエンターテイメントをしに行って来た。クラスでも、ワークショップでも、レクチャーでもなく、ただベースという楽器をネタに音楽の楽しさを伝えられればということで、自分ではシンプルに「ショー」と思っている。

今回はベンも良く知っている、僕の親友であるピアニストのリチャードが参加してくれたので、かなり本格的なショーとなり、始めから皆が楽しんでくれている手応えがある。

当初はベンのクラスと、もう一つの比較的に高機能の子たちのクラスが集まる予定だったのだが、重度の障害を持つ子供達のクラスも一緒に参加する事になった。

リチャードの楽器説明の後に、早速ベースを使って、音楽の種類を説明してみた。するとヒップ・ホップのビートをベースで弾くや否や、近くに座っていた子がラップを歌い始める。

「今日朝起きて、学校に来ると先生がおはようと言った」などといった日記的な詞をその場で作り上げ、ビートに乗せてゆく。アフリカン・アメリカンである彼は、持ち前のルズム感をあます事無く発揮するその姿は、DNAというものの存在をはっきりと感じさせられる素晴らしい瞬間となった。

続いてクラス担任でありながら、音楽の授業も担当されている先生が、子供達と練習していた、「What a wonderful world」を皆で合唱、クラス・ルームは音楽のエネルギーで一杯になってゆく。

今回のショーで大きな収穫だったのが、重度の自閉症児たちの反応。ロッキング(体を前後、左右に揺さぶる)が収まらない子も、笑顔で僕らの前で揺れ続ける。僕の目に、その様子はどんな人よりも心から音楽を楽しんでいる姿に映った。

最後は、前回と同じ様に一人づつベースを触ってもらう事になり、それぞれ、自分なりの方法で持ち弾いてみるのだが、皆、説明する必要も無いほどにしっかりと楽器を持ち、弦を弾く。2人のアシスタントの先生に付き添われた子は、糸巻きやボリュームつまみなどのあらゆるパーツをいじってみるが、最後には弦を弾いて音を出す事が出来た。「Good Job !, Good Job !」付き添いの先生方と共に拍手をする。

後から先生方から伺ったお話で、ロッキングの激しい子と、アシスタントの付いた子は、言葉を使わないという事を知ったのだったが、そのお話を聞くまでは、(いや、その後も)言葉を使うかどうかを知る必要も無く、僕は何の問題も無く心の底から彼らと会話していた。

先生方でさえ、重度の子供達と一緒に行うのは無理と思われていた、「音楽」のショーは何の障害も無く彼らにアクセスして行くことが出来、改めて音楽という言葉の素晴らしさに気付かされる出来事となった。


さて、肝心のベンはどうしていたかと言うと、期待に対する興奮を表現するために、僕が来るまでの間は落ち着かなかったようだが、実際に登場した途端、急に大人しくなり、ショーの終わりまで逆に存在が希薄に感じる程に大人しく座っている事が出来た。最近のベンはこういった事が多く、プレゼントを待っていたりする際の期待による興奮のコントロールが出来ない代わりに、期待が達成された後に急に大人しくなるという傾向がある。

ベンの中での期待がきちんと具体化したことによる安定感なのか、こだわりへの不安が解消された結果なのか、また一つ興味深く見守って行きたい事柄だ。

予定されていた1時間はあっという間に過ぎ、子供達は皆、興奮冷めやらぬ状態で、それぞれに歌を口ずさみながら次のクラスへと移動していった。

続く



音葉の力_f0097272_2311048.jpg
by gakuandben | 2007-02-12 23:04 | 自閉症に関して
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