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ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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脳で描く人たち
パーティでの演奏は、僕ら一般のミュージシャンにとって大事な収入源のひとつで、マネージメントがつくほどの知名度のある人以外は、パーティ・コーディネーターからの依頼や、個人的なつながりで何らかのパーティ・ギグをこなしている。

あらゆるジャンルの音楽にわたって雇われるパーティーでの生演奏。結婚式などでは、ガーデン・セレモニーで弦楽四重奏、カクテル・アワーでジャズ・トリオ、ディナーとダンスにはホーン・セクション入り10ピースのロック・バンドなどというゴージャスな展開なものも多い。

行く場所により服装にも指示があり、セレブや要人が集まるようなパーティでは休憩時間にロビーで座ってくつろぐことも出来なかったりもすれば、まるで自分もパーティーに招待されているかのような錯覚におちいってしまうほどのゆるいものまで様々だ。

そんな中、よく仕事をさせて頂くのがファンド・レイザーと呼ばれるパーティ。団体の活動資金を集める為のもので、オークションであったり、出席者のディナーの代金に寄付が含まれていたりといったものなのだが、豪華な雰囲気を出すためか同時に生演奏が入る事が多い。

アートやスポーツの団体、学校など寄付によって支えられている機関にとって大事な収入の機会となる行事なのだが、先週末の仕事はニュージャージーでの絵画オークション。

奇麗に展示された絵画の前には入札表が置かれ、それぞれの入札額を書いてゆく。演奏を一時中断して、ビデオ・プロジェクターでこの団体の活動報告を見る時間となって、会場に車椅子の方たちが多いのがわかった。

A.R.T.という名のこの団体は、脳性麻痺や自閉症で体が不自由になった方の為のアート学校を開いており、今回はその作品の展示販売会兼、寄付金を集めるためのパーティーだった。

喋ることや、体を動かすことが困難なために、レーザービームを頭や手につけてキャンバスにトレースする。それをアシスタントのアーティストが同時に描いてゆくといったものなのだ。

創設者であるティムさんは、活動報告の挨拶でアートの持つ可能性を語り、その下りである自閉症の生徒の話をしてくれた。

私は生徒である彼女に、どの方法が良いか聞いたんです。「レーザー?それともブラシが持てるならブラシにする?」すると彼女ははっきりと「レーザー」と答えた。後で介護士と話をしていると、「えっ?彼女は喋れないはずですが」と言うんです。


たくさんの障害者の親御さんたちが、作品を前に誇らしげに見える。ベンより少し年上の女の子。車椅子の上でパーティのために着飾った金色の靴が落ちてしまうのを、妹が何度も拾い上げた。

発想の勢いが違う。自分の手で描かなければいけないと思うところで終わってしまいそうなところを、本人の意志で指定させることにより乗り越える。自らもアーティストであるティムの情熱と行動力に敬服したのだが、宴の最後にもっと驚くべきことを知る。

上映された映像は5年以上前のもので、その後、彼は徐々に視力を失う病気となり、現在は完全に視力を失っているとの事。あまりに自然な振る舞いに全く気づかなかったのだが、年老いた父親が小枝を持って、その枝につかまりながら歩いていたのだった。

アーティストとして、不自由な人を助けた自らが不自由なアーティストとなる。どんな気持ちの葛藤があっただろう?

間違いなく言えるのは、彼にはすべてが見えているということだった。それは本当に目で見えるものよりもずっと深いものであるに違いない。




脳で描く人たち_f0097272_141748.jpg
by gakuandben | 2007-10-18 02:28 | 自閉症に関して
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