ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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自閉症に関して
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タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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Lucy in the Sky
ポーラ、リチャード夫妻は今年もニュージャージーのビーチ・ハウスに招待してくれて、車で2時間ほどの距離にあるビーチでリゾート気分を味わいに行った。

残念ながら週末は雨続きでビーチはとても楽しめる状態では無かったのだが、ベンはどちらにしろ海には入らないし、弟の方も天気は問題にせず逆に悪天候の高波を楽しんでいた。

とはいえベンにとってはコンピューターの無い一泊旅行で、持て余してしまうことを心配してしまうのだが、そこは不思議な適応性があり、潔く諦めてくれるのだ。

代わりにDVDのプレーヤーを持って行ったのだが、それにすがることもなく割と普通にバケーション的な行程を楽しんでくれた。

もちろんお約束の海辺遊園地では大興奮だったが、これも雨で半分が閉じた状態。ゲーム・センターなどの室内で楽しむものだけが営業している。遊園地の乗り物が大嫌いなベンにとって、良い事だと思いきや「Oh No, It's closed !」と嘆いている。どうやら、見るのは好きだったようだ。

確かに遊園地の乗り物は乗ってしまうより、見ているだけの方が楽しそうで、きらきらと奇麗でもある。

家に戻ってワインを飲みながら、ベンにジョークを飛ばすと最近するようになった面白い反応をする(わざとらしくA ha ha ha と笑い「Daddy , That's joke」と言う)。これは冗談を理解して言い返すところまでが非常に普通なコミュニケーションだ。

翌日も悪天候は続き、寒く、雨足も強くてとてもビーチに行く状態では無い。機転の利くポーラは、車で1時間程のところにある観光ポイントに行く事を提案してくれた。

アトランティック・シテイにある巨大なゾウ「ルーシ」は1800年代に不動産王が地域の復興を狙って建てたものだそうだ。歴史的建造物に指定されているのだが、なにぶん古いものなのでこれといった仕掛けは無い。

ゾウの中に入るツアーいうことで、期待しながら足についているドアかららせん状の階段を登ると、そこには大きな家のリビングルーム程のスペースがあり、このゾウに関する歴史ビデオを見る。終わるとゾウの目の部分が窓になっていてそこから交代で海を見た。 それだけだった。

昔、伊豆方面に旅行すると沿道に必ずあったのが秘宝館。子供心に何か不思議な存在だったのだが、少々エロなものだったようで大人になってから入館してみた思い出が蘇る。

どちらも要するにポイントは客寄せのためのものだったわけで、何故ゾウなのかは良くわからないのであったが、僕はベンを連れてこの場所に行ったことを一生忘れないだろう。

悪天候の中、まる2日の行程に付いて来れる様になったベン。本屋やショッピング・モールに行きたいと口走るものの、気付けば随分と自身のコントロールが出来る様になったものだ。

公園中をあちこち走り回る5才のベンを見て、将来この子をどこか旅行に連れてゆくことはできるのだろうかと思った。
 
ルーシを見に行けた事を、本当に感謝したい。


 

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by gakuandben | 2007-08-24 12:25 | 自閉症に関して
つかまる手

昨夏に投稿した、公園の年老いたお母さんと僕の年くらいの重度の自閉症をもった息子さん。

今年も元気な姿をプールで見かける。息子さんはバスケットが得意で、公園ではよく見かけるのだが、プールも好きなようで、泳ぎはしないのだが水面を叩いて楽しそうにしている。

毎日のように通っている僕には、お母さんではなくケア・テーカーの人が一緒に来るとちょっと心配してしまうのだが、どうやらそれは決められた日に連れて行ってもらえることになっているようだ。

ただ、去年までは一緒に水着を着てプールサイドにいたお母さんは、今年になってからは洋服を着たまま日陰に座っていることになった。

嬉しいことに、70歳は過ぎているであろう彼女をプール関係者がいたわり、階段の登り降りのないようにフェンスのドアから入退場、ベンチしかないプールサイドには特別に背もたれのある椅子を用意してくれるようになったのだ。

息子さんは、言葉も喋るようなのだが少しチック的なところがあり、同じ行動を繰り返したり、うなり声を出したりしている。ただ、周囲の人から離れるようにしているのでトラブルの心配は少ないだろう。逆にベンの方が一見普通に見えて変な行動を取るので周りの人を驚かせてしまう。お母さんは別段注意を与える事なども無く、1時間弱のプール時間は終わる。

いつかお母さんと話をしてみようとは思うのだが、それはいまだに出来ていない。

何か興味本位で聞いているように思われるのを恐れるし、リアルな話を聞くのが怖いのかもしれない。でもきっとお母さんも僕らのことを気づいているのではないかと思うのだ。

そしてふと気がつくと、お母さんの手につかまってゆっくりと歩く息子さんの後ろ姿がある。

それは少年の手を引く母の姿なのだが、僕にとっては息子さんにつかまって歩く年老いた母親の姿だった。



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by gakuandben | 2007-08-17 13:21 | 自閉症に関して
The Long and Winding Road
そして、これと言った出し物の無い夏休みは2日目を終えたところ。

サマー・キャンプ、サマー・スクールを終えた後が、ベンにとっての本格的な夏休みで、学校が無いことを本当に嬉しく思っているようだ。

その分、「Where are we going tomorrow ?」と、しつこく聞かれるので「自分が行きたい所は無いのか?」と聞くと、「Ummmm~ I don't know」となってしまう。

それは僕にとっても同じことで、そんなに毎日予定をたてておくことが出来る筈もなく、「行き当たりばったり的なアイディアで、あまりお金を使わず、時間も無駄にしない何か」を考えつくのに費やす時間が午前中になる。

もちろん用事があれば、それに合わせた予定になるので選択肢も無くなるが、時間がある時にはきっと誰もが親心として「何か夏休みでなければ出来ないことを」と考えるだろう。

作戦のひとつとして、NY観光というのがある。せっかくNYに住んでいるのだから、観光で訪れる人が行くような場所に行ってみるというものだが、これは結構な新発見があって楽しい。

例えば、ハード・ロック・カフェなどは、地元の人は先ず行く事の無い店だが、アビーロード・スタジオのドアや、ジミヘンの衣装、ポールの使ったホフナー・ベースが飾ってあったりして、ちょっと音楽好きな人ならかなり楽しめるだろう。

お金のかからない楽しい乗り物としては、スタッテン・アイランド行きのフェリーというのもある。遊覧船が20ドル以上するのに対して、このフェリーは無料で、自由の女神もちゃんと見る事が出来る。

こうした場所に行くのは自分も旅行している気分になれるので、子供に付き合っているという感覚よりは、自分の興味と兼ね合わせて、子分を連れて楽しんでいるという感じだ。。

ただ、ベンはどうしても本屋に行きたいという呪縛からは未だ解き放たれることは無く、2日に1度は本屋か、本のある場所に連れて行かなければならない。

今日は近所の図書館で我慢をしてもらったが、ベンにも「休みになれば、大きな本屋さんに頻繁に行ける」という期待があるためか、しきりと大型書店の店名と場所を言って来たりもする。場所を言うのはその支店が大きいからで、例えばバーンズ&ノーブルスなら、ユニオン・スクエアにある特大の店に行きたいわけだ。

それでも、以前に比べれば説明して納得してくれることも多くなった。「時間が無いから今日は近所の図書館ね」と説明すれば、不服ながらも従ってくれる。

ニュース・スタンドで雑誌の立ち読みは出来ないが、大きな本屋さんなら出来る。僕らには何となくわかっている暗黙のルールというのも、場の雰囲気を全く読めないベンには説明して理解してもらうしかない。

説明しているそばから、平気で新聞を立ち読みしたりする人が居るのがマンハッタンなのだが、こうした細かいルールを積み上げることによって少しずつでも一人で行動出来る様になってくれればと思う。


明日は朝一番で、大きな本屋さんへ向かう。
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                  Hard Rock Cafe 良いコンセプトです。
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by gakuandben | 2007-08-15 21:54 | 自閉症に関して
いつもの夏
そしていつものようにベンは帰ってきた。毎年キャンプの後は日焼けをして少し痩せているのだが、 家に戻って自由に食べられる状況はベンにとって最大の誘惑なのだろう。1週間もしないうちに体重は元に戻ってしまう。

今年は日本からのキャンパーも参加しているキャンプだったこともあり、キャンプ中の連絡でも、「ベンは日本人の子たちと流暢な日本語で会話をしています」と聞いた。もちろんそれを見た先生はアメリカ人で、ベンがどの程度の日本語を喋っているのかはわからないので流暢ということになるのだろうが、何かしらのコミュニケーションがあったことは興味深い。

夏休み前に学校であった、性的な問題行動(ハグしたときに下半身を押し付けてしまう)も無かったようで、ひと安心だ。

回転や、手叩き、足をふみならすといったマイルドな問題行動は継続しているが、下半身に及ぶ重大な問題に関してはコントロールが利いているようで、この調子で自制心がついてくれればと思う。

下半身の問題に関しては、「そういう行動は犯罪になるぞ」とキャンプ前にかなり脅かしておいたので効き目があったのかもしれない。

僕らでも、頭で理解してもついついやってしまうというのは法にふれないからということがボーダーラインになっていることも多く、ベンにとっても同じように自制する加減があるのかも知れない。

法には触れないが、外で出たゴミを決してそのまま捨ててしまうことは無く、すべてポケットにしまい込むという几帳面さもあるので、自分の中での法律というのもあるのかも知れない。

一般社会の中で生きてゆくための、ベンなりの法律がやがて実を結ぶのを期待したい。

キャンプの2週間を取り戻すかのように食べるベンだが、良い変化は最近ゆっくりと食べるようになった事。味わう事を覚えたのか?

それでも食べる量は同じなのだが、見ている側としては好ましい変化だ。

旅は終わり、何事も無かったかのようにいつもの夏休みが始まった。



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by gakuandben | 2007-07-24 00:46 | 自閉症に関して
伝えられたメッセージ
「無理でしょう。前もってよく考えれば不可能なのでやめておこう。」という考えはいつ頃から使い始めただろう? 時にもう一人の自分への問いかけの中で最高の逃げ口上となる理性なのだが、ベンの学校で見たものはそんな気持ちの襟を正してくれた。

ベンのクラスは6人。この学期を通してのプロジェクトとして10ヶ月に渡って行われていたのが、クラス全員による創作演劇。学年の近い2つのクラスの先生が企画した、自閉症という障害の一番苦手とするであろう分野に、白紙の状態から挑んでゆく、全てが手作りのチャレンジングな試みだった。

それはきっと先生方にとって気が遠くなるほどの地道な作業で、情熱というガソリンを持ち合わせていなければとてもなしえる事では無いだろう。

ベンのクラスが考えたストーリーは、タイムズ・スクエアにあるトイ・ザラスに買い物に来た観光客が、DVDを買おうとするのだが、日本人観光客(当然ベンの役)の出したお金がドルでなく円だったことに腹を立てた店員が、お金を破り捨ててしまう。といった事件から始まる。

途中、挿入歌を皆で歌う場面もあり、15分の短い劇ながら本当に充実した内容だ。その歌でさえも生徒たちが並べられたベルを鳴らして作曲、歌詞も起承転結をふまえた作詞の基本に沿った方法で書くように指導したとの事。

リサーチのために、クラス全員でタイムズ・スクエアのトイザラスに行き、
実際に店長にインタビューをして脚本をつくる参考にしたという。

劇の最後は店長が出て来て、お金を破り捨てた従業員を叱り、「違ったカルチャーのお客様でも、喜んで受け入れましょう」といった結末になる。

何ともポジティブなメッセージを持ったこの演劇は、いくつか聞き取りにくいセリフがあったにもかかわらず、DVD売り場とレジのセットだけの舞台から、彼らのメッセージが存分に伝わってくるのだった。

自分たちの演じたい事や歌いたい事を劇にするという発想が素晴らしい。そこには演ずる事へのシンプルな動機があり、実際にストーリーはベンの好きな、「トイ・ザラス」や「DVD」といった環境になっていたというわけだ。

練習をしてゆくうちに、偶然出たというアイディアもふんだんに盛り込まれ、アドリブ的な自然な要素が笑いを誘う。ベンはカラオケという名の日本人で、「こんにちは」などと日本語で言い、お辞儀をしたりする場面もあった。

僕は演技をする彼らを見ながら、一人一人に秘められた大きな可能性を感じながら、それを引き出そうとしてくれる教育をしてくれた先生方に心から感謝した。

最後に全員で踊ったテクノ調ダンスは、ストンプと、胸叩きという振り付けで、これまたベンの日常生活をダンスに表現したかの様だ。僕は涙を浮かべながら大笑いをしていた。
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by gakuandben | 2007-06-12 07:25 | 自閉症に関して
Did you miss Me ?
「I miss you」は挨拶時の常套句としてよく登場する言葉。それが、未来のことであっても、過去の事であっても構わず「会えなくて寂しく思ってました」という気持ちを伝えるフレーズなのだが、何ともやさしい響きを持った好きな瞬間だ。(もちろん未来ならgoing toを使ったりもするが、省略されていることも多い)

日本語なら、「ご無沙汰していました」というニュアンスなのだろうが、僕にとって「miss you」もうちょっと近しい心のつながりを感じさせる言い方で、短いフレーズにいっぱい想いのつまった感じのするのが良い。

お別れパーティーやカードなどで、Good-byeよりも、このMiss you を使うのは、「あなたがいなくなることによって、ぽっかりと穴が空いてしまいました」的な寂しさを伝え、「出来ることならいつの日かまた戻ってきてね」という優しいグリーティングの言葉でもあるからだろう。


ベンがいつこのフレーズを覚えたのかは覚えていないのだが、僕も仕事から帰って来たときに言われたりすると、何とも嬉しい一言なのだった。おまけに、久しぶりに会った人などに、少し悲しそうな顔をして「Oh, ○○I miss you !」なんて言いながらハグするものだから、言われた方はグッときてしまうだろう。

ところが、そうした感動的な再会を果たしたかのような場面のあとには、当事者とはろくに話もせずにさっさと自分の部屋に向かいコンピュータに向かってしまう。だから、ベンがどれくらいの気持ちを込めて言っているのかは分からないのだが、とても良い言い方を覚えてくれたものだと思う。

映画の場面で覚えたのかもしれないし、誰かがやっていたのを真似しているのかもしれないが、表情や言葉の表現から推察しても、僕が見る限りではただ形式的に言っているようには思えないのだった。

いや、きっとその瞬間は本当にそういった気持ちがあるのだと思う。ただ、その後に続く会話も無いので、さっさと切り上げてしまうのだろう。確かに僕らの会話の中でもそんな瞬間は良くあるのだが、そんな時は「Miss you 」まではいかずに「How are you?」程度の間柄だったりもする。

昨日はベンが生まれる前からの友人でもあるエイミーが家で録音をしていたところにベンが帰って来た。1年ぶり位で彼女に会ったベンは、「Amy, I miss you 」とハグをする。いつもなら、それでおしまいなのだが、昨日はエイミーのするいくつかの質問に最低限の応答ながらきちんと答えている。「ベン、ちゃんと質問に答えて偉いぞ。」と褒めると、そのまますくっと立ち上がり自分の部屋に行ってしまった。


ベンをストローラーに乗せてバンドのリハーサルをした思い出話をする。帰り際にエイミーと並んで写真を撮るとベンの背の方が高くなっていた。

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by gakuandben | 2007-05-05 01:24 | 自閉症に関して
知られざるパーティー
「I have a show tomorrow」ベンが前日の夜に突然言った。「え?何にも知らされてないよ。本当にパフォーマンスがあるのかい?」と聞き返しても、ショーがあるとしか言わない。学校で、芝居を練習していたので発表会かなとも思い、朝になって学校に電話してみると、「ええ、今日はパフォーマンスがありますよ。」との返事。

学校歩いて10分程の距離なので、教えられた時間に行ってみることにした。大きな講堂には各サイトからスクール・バスに乗ってやって来たスペシャル学級の生徒達が続々と集まって来る。かなり大きなイベントだったのにちゃんとした連絡が無かったのを疑問に感じながらも、パフォーマンスに備えてビデオ・カメラを準備した。

校長先生の挨拶の後に登場したのは、ラスタ・キャップをかぶったレゲエ風ミュージシャン3人。「OKみんな、ダンスの準備は良いか?」と呼びかけると、いきなりボブ・マーリーのワン・ラブを演奏し始める。勝手知ったるプロフェッショナルな演奏に、生徒達は席からあっと言う間にステージ下に集まりダンス・パーティが始まった。

ベンの言った通り、それは「レゲエ・バンド」のショーであり、先生のおっしゃった通り、パフォーマンスが行われていた。なるほどそういうわけだったのかと思う間もなく、踊りに夢中になる子供達の楽しそうな姿。子供達だけではなく先生方も一緒に踊ってる。

そして数曲を終えると、各学年の代表が自作の詩を朗読する。こちらでよく見るミュージック&ポエムの形態になっていて、それぞれの先生たちが生徒を助けて詩を読ませている。言葉の出ない子供には首から下げたスピーチ・マシン(絵を押すと音の出るボード)を押して手伝う。

そんなさらりとした行動からでも、かいま見れるのは日頃の大変な様子。それでもステージに上がった先生も子供達も成長の成果を楽しんでいるのがわかる。こんな発表の精神は、日本で僕が経験した完璧な発表会とはちょっと違う、むしろその為のプロセスの方が重視されていて、本番はどうでも良いという感じのもので、見ている人全てを笑顔にさせてしまう。

「私たちはここにいて、ちゃんとやっていますよ」と伝えるためのちょっとした機会が、スタッフや先生方、そして子供達をリフレッシュさせているのだろう。

そしてまたバンドの演奏が始まった。よく考えてみれば、DJではなく生演奏というのも中々贅沢な企画ではあるのだが、生演奏の良さを一番理解してくれそうな彼らのためにそういった予算が使われるのは大歓迎で、ミュージシャンとしても有り難い限りの話なのだ。

そして会は終わり、皆あっという間にそれぞれの学校に帰ってゆく。校長先生と話すと、毎年同じバンドでもう数年続いているそうだ。そうか、今日は皆のダンス・パーティーだったのか。だから親にも特別に連絡しないで、毎年内輪でやっていたんだ。

今回はベンのリークでついに内緒の会に潜入する事が出来た。来年はこちらからチェックして楽器を持って参加しよう。


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by gakuandben | 2007-05-01 13:04 | 自閉症に関して
Differently-abled Kids
春休みとはいえ、旅行などからは無縁な僕らはもっぱら近所や近郊への外出が休暇の過ごし方となる。それでも車で出掛けられるだけ幸せなのだが、こういった学校の休日では一般の混雑と重なることとなり、さらに平日の路上駐車は至難の技で、かといって駐車場に入れようものなら1時間で30ドルは下らない。

だから歩いて行ける場所や、地下鉄に乗って出掛けることにするのだが、ベンの楽しめる場所には当然のように制約があり、弟の方にはストレスになってしまうということも多い。博物館や美術館に行ってもじっくりと楽しむことは不可能で、ベンのことを追い回すので終わってしまうのだ。

そんな状況を知っている友人のポーラは、弟をエリス島の移民博物館に連れて行ってくれる事になった。自由の女神の近くにあるボートで行く島なのだが、ちょっとした旅行気分を味わえるし、学校の勉強とも重なっているので本当に有り難い。そして、何よりもベンの制約を受けずに過ごす日が出来たのも良かった。

というわけで、10日間の春休み最後の日、僕らは別々に行動し、ベンの大好きなタイムズ・スクエアに行くことになった。こちらの方も弟に文句を言われずに好きな所に行けるというのは気が楽であり、電光掲示板を楽しみ、バージン・メガストアでは好きなだけDVDや本をブラウズする事が出来る。

そんな気ままな行程の中、トイザラスのメガストアに入ると、真っ先に目を引く屋内観覧車の横、入り口正面に何やらビラの入ったラックが設置してある。いつもならセールのチラシが入っているラックを何気なく見ると、「Autism」(自閉症)と大きく書かれた見出しのチラシが目に飛び込んで来た。

手にとってみると、そこには自閉症の子供向きのおもちゃの紹介がしてあり、それぞれの発達の度合いによりマークがつけられている。感心して読んでいるとベンがどんどん先へ行ってしまうので、後から落ち着いて読むと、それはAutism Speaksという団体がトイザラスの協力で作ったもので、「自閉症を知っていますか?」という小見出しには。最近急激に増加中の20分に一人の確率で生まれている発達障害と書かれていた。

さらに自閉症の幼児期の兆候として、いくつかの項目が掲げられ、ベンが4歳の頃何度も何度も読み直した思い出がよみがえる。しかしながら、商業主義の総本山であるタイムズ・スクエアのど真ん中で、こういったチラシを目にすることは、驚きと、誰かがどこかで支えてくれていることを知る心強い瞬間であり、嬉しくなってたくさんチラシを取って来てしまった。

寄付の習慣が発達したアメリカでは、こうした外郭団体の活動が盛んで、自閉症関係だけでも大小合わせると数えきれない程の団体があり、あるものは研究機関のリサーチに重点を置いていたり、成人の自閉症者の支援であったりと、それぞれにスペシャリティがある。


運動不足の解消を兼ねて、帰りは歩いてみることにした。1時間近く歩き続けるとベンは足が痛いと言ってはいたものの良い運動になったようで、帰ってしばらくは随分と落ち着いていた。こうしたベンを見ると、郊外の運動をたっぷり出来る学校が良いのかなと思ってしまう。

帰宅した弟にチラシを見せていると、面白いことに気が付いた。一番上に書いてあったのは、『トイザラス、障害児(disabled)の為のトイ・ガイド』だと思っていたのだが、よく見ると「differently-abled」(異なる能力を持つ)となっている。

そんなポジティブなチラシとともに、春休み終わった。

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by gakuandben | 2007-04-19 00:23 | 自閉症に関して
New York Rock City
自閉症児へのしつけというも、それぞれに違った手法があるだろうし、躾けられる側の状態、状況によってそれぞれに最善の方法を模索してゆくものだろう。行動管理のレッスンで先生から、「自閉症だからといって甘やかしてしまう親も多いのですけれど、彼らにもきちんとしたしつけが必要なんです」と言われたのを思い出す。

ベンはテレビドラマなどで見る大人しい自閉症児とは違って、言葉も多く、激しい感情の表現も、体全体で意思表示をしているかのように自由奔放な立ち振る舞いだ。指示を出しても「はい、わかりました」という訳には行かず、何度かの説明を兼ねた問答がくり返されるのが日常的なパターン。

「ベン、もう寝る時間だから、コンピュータを消しなさい」と言っても当然ノーということになる。「遅くまでコンピューターをやっていたら、脳に良く無いし、体に悪影響になる。学校はドロップ・アウトしてしまうし、寿命も短くなるよ」と言うと、それは嫌なのでしぶしぶ納得するのだが、そこで納得するのがベンでもある。

ショッピング・モールで興奮して手を叩いたり、声を出してしまうベンを、「周りの人の迷惑になるからやめなさい」と注意すれば、「I'm sorry dad, I am not noisy !」と自分の非を認めて謝っているのと同時にそれを否定する返答をするのだった。

僕はその都度、何度も注意をし続けるのだが、ベンの中での完璧な自分は、僕や他の人を怒らせず、不快な思いをさせない自分なのだろう。でも、そう思ってくれる事に僕は有り難みを感じるのであって不可解なコミュニケーションではあっても、とにかく伝えることを心がけている。

そして、僕はそういった説明めいた注意をすればする程、「そんな事は、どうでも良いじゃないか! 人を傷つける訳でもないし好きにやらせてしまえ!」というロックな感情がむくむくと湧き出てくるのも確かであり、アフリカの大草原で暮らしていたら何の問題も無いのになどとも思ってしまう。

だから僕にとっては、自閉症だから甘やかすといった問題では無く、ベンの行動に対する考え方を自分自身の中でを甘やかしたり、厳しくしたりするコントロールの問題なのだ。考えてみれば、親の躾けというのはまるで自分を躾けているようなもので、それぞれの判断と尺度によって自分が反映されているものなのだろう。

そして、実際に何が問題なのかを説明してみると、口癖のように注意するのとは違って、核心の部分が見えて来る。ベン自身の健康のことだったり、周りに人への迷惑だったりと明白な理由があるもの以外は自然とその意味を失い、こちらの都合でコントロールするような指示は出来なくなった。

逆に度々起こしてしまう「変な行動」に関しては、説明が難しく、実際の迷惑になっていない分、人から見たら恥ずかしいだろうという考え方を理解させるのは時間がかかりそうだ。

スターバックスでコーヒーを買う人の列に割って入り、レジ横に陳列してあるDVDを手に取って見始める。「変」なのはベン以外の人から見て変なのであって、僕は一般の人から見たベンや自分の体裁を考えてハラハラしているだけなのだろう。

バーゲンで入った洋服屋で、ふと気付けばベンが旅行用鞄を持った自分を鏡に映してニコニコしている。聞けば「I am going to summer camp」と言う。ハッピーな瞬間はそのままにしておいた。

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混み合った地下鉄ホームでは階段の上で電車を待つ
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by gakuandben | 2007-04-10 22:19 | 自閉症に関して
謎を教えてくれるテレビ
ベンの弟から携帯に電話がかかる。「ベンがアパートの前で泣いてる。ダディはどこに行ったって叫んでるんだ!」

「ええっ!だって今日はちょっと遅くなるって言っておいたじゃないか。」仕事の都合で子供たちの帰宅時間に30分間くらい合わない予定だったのだが、実際には1時間近く遅れてしまっていた。

毎日のパターンでは、歩いて5分の学校に弟を迎えに行く時間と重なってしまう為、スクール・バスで帰宅するベンは合鍵を使って部屋に入る。今日は弟の方にも一人で帰宅するように頼んでおいた。

僕は仕事からの帰り道、ベンが帰宅しているのを確認する為の電話を家にしたのだが応答が無く、不審に思っていた矢先の電話だった。いつもは何の問題もなく家でコンピューターに向かっているはずのベンが、何を思ったのかパニックを起こしてしまったらしい。ベンの帰宅後20分遅れで家に戻った弟が見たのは、アパートの前で泣き叫ぶベンだったというわけだ。

弟はアパート1階にある洗濯屋さんの電話を使って電話してきていた。ベンの声が背後に聞こえる電話にこちらがパニックになってしまいそうになる。ベンに変わってもらい、直に説明した。「ベン、一体どうしたんだよ?あと30分で戻るから泣くのをやめて弟と一緒に部屋に入りなさい!」

10分後地下鉄に乗る前に電話すると、「問題なくアパートの中に居る」との弟かえあの返事。落ち着きを取り戻し家に戻ると、何事も無かったかのようにベンがコンピューターに向かっている。

「ベン! 何でアパートの前で泣いたりするんだ! 外で泣いたらみんなに迷惑がかかるんだぞ!」持っていたベースアンプを床に叩き落として怒鳴ってしまった。出来ると思っていた事が出来ない事への怒りと、自分自身が取り乱してしまったことへの怖さが重なってしまっていた。

呆然と見守る弟を「本当は君が一番辛かっただろうね」と視界の隅に見る。弟に大変な思いをさせてしまった事も、近所の皆さんにまたしても迷惑をかけてしまったのも、すべてが許せなくなってしまっていた。

僕が怒るのを見て、当然のようにベンもパニックになってしまい、正確な理由を聞き出そうにも、支離滅裂な答えしか返って来ない。次の日に近所の人に謝りにゆくと、どうやらベンは一度鍵を使ってアパートに入ったのだが、何らかの原因でもう一度外に出たらしく、その後玄関のドアを叩いて泣き始めたとの事。

家に入れなかった訳でもなく、学校で何か特別な事情があった訳でもなく、未だにその理由は謎なのだが、今回も近所に住む人達の暖かい言葉に励まされた。僕は13歳になる自分の子を過信していたようで、口で伝えるだけでなく書面に残して部屋に置いておくといった更なる注意が必要だったのを反省する。

その日にしていた仕事が障害のある高齢者の病院でのコンサートだったのも、自分を皮肉に映し出す。「人の世話をする前に自分の息子をきちんと見たらどうだ」その挙げ句に怒鳴って叱りつけてしまうなんて最低じゃないか!



インターネットをしていると日本からのニュース。「高タンパクの食事をとり続けていると、ADやADHDになる可能性があり凶悪犯罪の原因にもなる」との番組を作ったテレビ局が謝罪文を掲載した。

「恐怖の食卓」というバラエティ番組だったそうだが、僕が心から思ったのは、自閉症とは違うものの、同じ様に謎が多く、そんな状況と毎日戦っている人達がいる障害を、簡単に食事を原因にして話を片付けてしまうという番組を作るというテレビ局の人達に、人思いやる気持ちというものがあるのだろうか?という事だった。

誰もがなりたくてなったわけでもない障害を、食事を変えて治るのなら、とっくに治しているだろうし、そう結論づけた医者の前には行列が出来るだろう。「母親の愛情が足りないから自閉症になる」とまことしやかに言われていた時代を彷彿とさせる内容だ。

関係する人が少ない分、納豆事件のような大事にはならないが、障害者に偏見を持たせる情報をわざわざテレビで放映するというのは、比較にならないくらい悪質で、おまけに納豆のように誰かが得をすることさえも無い。


ジャーナリズムの一端を担う、そういったテレビ番組を作る人達に、障害を持つベンを理解して助けてくれる、僕の近所の人々の愛までもを踏みにじる失礼な行動だということだけでも知ってもらいたいものだ。

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by gakuandben | 2007-04-03 09:55 | 自閉症に関して