ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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鳩の人生劇場
東京ではどうだったか覚えていないのだけど、ニューヨークの鳩の数は尋常ではない。公園でホットドックを食べれば、座ったベンチの下には食べこぼしのパンを狙った10羽以上のハト達が一気に集まり、リスも圧倒されて怖じ気づく程だ。

コミュニティに必ず何人かいるハトおばさんも、種やパン屑といった小鳥的なものではなく、パン屋から出た売れ残りを引き取り、それをほぐしてバラまいているのだ。ドカンと落ちたパンのかけらに5.6羽にハトが群がり、あっという間にバラバラになったパンは10秒もしないうちに跡形もなくなってしまう。

そんなハトの群れにベンが体を叩きながら近づこうものなら、50羽近いハトが一気に飛び立つ。とても平和の象徴として式典で放たれるイメージからは想像もできない、恐ろしい音と光景だ。群れた後にはビルの屋上や、屋根などそれぞれのねぐらへと帰ってゆくのだろう。


もう10年以上住んでいるウチのアパート最大の問題は、一年中通して落ちて来るこのハトの糞なのだった。上階には出っ張りが無く、窓に取り付けられたエアコンに止まる度に糞が落ちて来る。どんなに掃除をしても1週間もすれば、乾燥した糞がへばりついてエアコンの金属部分も腐食させてしまう程の威力だ。

だから冬の間は乾燥した、夏場は湿った糞の匂いに悩まされ、1月に一度は掃除をしないわけにはいかない状態になってしまう。当然、植木鉢に入れた花などは踏みつぶされた挙げ句に食いちぎられてしまうのだが、花でも植えないと本当にハトに占拠されてしまったように思えてしまうので、負けずに栽培することにしている。

そんなわけで、ウチのアパートの裏窓にある2畳分ほどの小さなバルコニーは、建物の谷間にある日当たりの良いハトの社交場と化しており、羽を休めてくつろぐ者や、バタバタと大きな音を立てながら交尾をする者、卵を産み落として育てる母ハトや、力尽きて死ぬ者まで、まさにハトの人生劇場となっている。

ハトの研究をしている人なら、本当に良い生体論文が書けるだろうと思っていたのだが、それまで害鳥扱いしていたハトの人生を知ることで、こちらにもリスペクトする気持ちが生まれてきた。

雪の積もった真冬や暴風雨の時にもにじっと卵を暖める姿や、生まれて来た子に一生懸命に餌を与える姿は本能とはいえ感動させられるものがある。テレビなどで取り上げられる見た目の良い動物ストーリーでは無いけれど、ハトはハトなりにしっかり生きている。

理由もなく嫌われてしまう者には、自分を知ってもらうチャンスすら与えられない。理解するために知ることが本当に大切で、逆に簡単な事でもある。

昨日観たティーン向けチャンネルの自閉症特集では、様々な自閉症児を紹介した後に、キャスターが「このように自閉症者は皆、それぞれに違った才能を持って生きています。一体どれだけあなた方とどれだけの違いがあるのでしょう?」と締めくくっていた。知ってもらうための努力をしてくれる、こうしたプログラムには心から感謝したい。

漠然と嫌いだったハトを知ることが出来た事にも感謝して、今年の花壇はハトから守るフェンスと、卵を暖めるハトとの共存を試みた。

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     後ろにあるのは、ハトよけとして全く機能しなかったフクロウの置物。
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by gakuandben | 2007-04-24 14:16
Differently-abled Kids
春休みとはいえ、旅行などからは無縁な僕らはもっぱら近所や近郊への外出が休暇の過ごし方となる。それでも車で出掛けられるだけ幸せなのだが、こういった学校の休日では一般の混雑と重なることとなり、さらに平日の路上駐車は至難の技で、かといって駐車場に入れようものなら1時間で30ドルは下らない。

だから歩いて行ける場所や、地下鉄に乗って出掛けることにするのだが、ベンの楽しめる場所には当然のように制約があり、弟の方にはストレスになってしまうということも多い。博物館や美術館に行ってもじっくりと楽しむことは不可能で、ベンのことを追い回すので終わってしまうのだ。

そんな状況を知っている友人のポーラは、弟をエリス島の移民博物館に連れて行ってくれる事になった。自由の女神の近くにあるボートで行く島なのだが、ちょっとした旅行気分を味わえるし、学校の勉強とも重なっているので本当に有り難い。そして、何よりもベンの制約を受けずに過ごす日が出来たのも良かった。

というわけで、10日間の春休み最後の日、僕らは別々に行動し、ベンの大好きなタイムズ・スクエアに行くことになった。こちらの方も弟に文句を言われずに好きな所に行けるというのは気が楽であり、電光掲示板を楽しみ、バージン・メガストアでは好きなだけDVDや本をブラウズする事が出来る。

そんな気ままな行程の中、トイザラスのメガストアに入ると、真っ先に目を引く屋内観覧車の横、入り口正面に何やらビラの入ったラックが設置してある。いつもならセールのチラシが入っているラックを何気なく見ると、「Autism」(自閉症)と大きく書かれた見出しのチラシが目に飛び込んで来た。

手にとってみると、そこには自閉症の子供向きのおもちゃの紹介がしてあり、それぞれの発達の度合いによりマークがつけられている。感心して読んでいるとベンがどんどん先へ行ってしまうので、後から落ち着いて読むと、それはAutism Speaksという団体がトイザラスの協力で作ったもので、「自閉症を知っていますか?」という小見出しには。最近急激に増加中の20分に一人の確率で生まれている発達障害と書かれていた。

さらに自閉症の幼児期の兆候として、いくつかの項目が掲げられ、ベンが4歳の頃何度も何度も読み直した思い出がよみがえる。しかしながら、商業主義の総本山であるタイムズ・スクエアのど真ん中で、こういったチラシを目にすることは、驚きと、誰かがどこかで支えてくれていることを知る心強い瞬間であり、嬉しくなってたくさんチラシを取って来てしまった。

寄付の習慣が発達したアメリカでは、こうした外郭団体の活動が盛んで、自閉症関係だけでも大小合わせると数えきれない程の団体があり、あるものは研究機関のリサーチに重点を置いていたり、成人の自閉症者の支援であったりと、それぞれにスペシャリティがある。


運動不足の解消を兼ねて、帰りは歩いてみることにした。1時間近く歩き続けるとベンは足が痛いと言ってはいたものの良い運動になったようで、帰ってしばらくは随分と落ち着いていた。こうしたベンを見ると、郊外の運動をたっぷり出来る学校が良いのかなと思ってしまう。

帰宅した弟にチラシを見せていると、面白いことに気が付いた。一番上に書いてあったのは、『トイザラス、障害児(disabled)の為のトイ・ガイド』だと思っていたのだが、よく見ると「differently-abled」(異なる能力を持つ)となっている。

そんなポジティブなチラシとともに、春休み終わった。

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by gakuandben | 2007-04-19 00:23 | 自閉症に関して
ラジオ出演のお知らせ
日本時間4/16 月曜 午前11時から12時まで
下記リンクからインターネット放送されますので、
是非アクセスしてみて下さい。

SUNDAY APRIL 15TH
10 P.M. - 11 P.M.
WKCR 89.9 FM
(live streaming at http://www.columbia.edu/cu/wkcr/)

QUARKESTRA IN CONCERT
on "Live Constructions"
hosted by Charles Blass

We're really excited to share our music with the greater world!!

India... 7:30 a.m. Monday April 16th
Japan...11 a.m. Monday April 16th
Guam..Noon April 16th

r.b. - piano, arabic keyboard & melodica
joe dallarda - sound constructions and arrangements
gaku takanashi - bass, shamisen & guitar
tony lewis - drums
paula jeanine - percussion

http://myspace.com/quarkestra
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by gakuandben | 2007-04-12 02:23
New York Rock City
自閉症児へのしつけというも、それぞれに違った手法があるだろうし、躾けられる側の状態、状況によってそれぞれに最善の方法を模索してゆくものだろう。行動管理のレッスンで先生から、「自閉症だからといって甘やかしてしまう親も多いのですけれど、彼らにもきちんとしたしつけが必要なんです」と言われたのを思い出す。

ベンはテレビドラマなどで見る大人しい自閉症児とは違って、言葉も多く、激しい感情の表現も、体全体で意思表示をしているかのように自由奔放な立ち振る舞いだ。指示を出しても「はい、わかりました」という訳には行かず、何度かの説明を兼ねた問答がくり返されるのが日常的なパターン。

「ベン、もう寝る時間だから、コンピュータを消しなさい」と言っても当然ノーということになる。「遅くまでコンピューターをやっていたら、脳に良く無いし、体に悪影響になる。学校はドロップ・アウトしてしまうし、寿命も短くなるよ」と言うと、それは嫌なのでしぶしぶ納得するのだが、そこで納得するのがベンでもある。

ショッピング・モールで興奮して手を叩いたり、声を出してしまうベンを、「周りの人の迷惑になるからやめなさい」と注意すれば、「I'm sorry dad, I am not noisy !」と自分の非を認めて謝っているのと同時にそれを否定する返答をするのだった。

僕はその都度、何度も注意をし続けるのだが、ベンの中での完璧な自分は、僕や他の人を怒らせず、不快な思いをさせない自分なのだろう。でも、そう思ってくれる事に僕は有り難みを感じるのであって不可解なコミュニケーションではあっても、とにかく伝えることを心がけている。

そして、僕はそういった説明めいた注意をすればする程、「そんな事は、どうでも良いじゃないか! 人を傷つける訳でもないし好きにやらせてしまえ!」というロックな感情がむくむくと湧き出てくるのも確かであり、アフリカの大草原で暮らしていたら何の問題も無いのになどとも思ってしまう。

だから僕にとっては、自閉症だから甘やかすといった問題では無く、ベンの行動に対する考え方を自分自身の中でを甘やかしたり、厳しくしたりするコントロールの問題なのだ。考えてみれば、親の躾けというのはまるで自分を躾けているようなもので、それぞれの判断と尺度によって自分が反映されているものなのだろう。

そして、実際に何が問題なのかを説明してみると、口癖のように注意するのとは違って、核心の部分が見えて来る。ベン自身の健康のことだったり、周りに人への迷惑だったりと明白な理由があるもの以外は自然とその意味を失い、こちらの都合でコントロールするような指示は出来なくなった。

逆に度々起こしてしまう「変な行動」に関しては、説明が難しく、実際の迷惑になっていない分、人から見たら恥ずかしいだろうという考え方を理解させるのは時間がかかりそうだ。

スターバックスでコーヒーを買う人の列に割って入り、レジ横に陳列してあるDVDを手に取って見始める。「変」なのはベン以外の人から見て変なのであって、僕は一般の人から見たベンや自分の体裁を考えてハラハラしているだけなのだろう。

バーゲンで入った洋服屋で、ふと気付けばベンが旅行用鞄を持った自分を鏡に映してニコニコしている。聞けば「I am going to summer camp」と言う。ハッピーな瞬間はそのままにしておいた。

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混み合った地下鉄ホームでは階段の上で電車を待つ
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by gakuandben | 2007-04-10 22:19 | 自閉症に関して
謎を教えてくれるテレビ
ベンの弟から携帯に電話がかかる。「ベンがアパートの前で泣いてる。ダディはどこに行ったって叫んでるんだ!」

「ええっ!だって今日はちょっと遅くなるって言っておいたじゃないか。」仕事の都合で子供たちの帰宅時間に30分間くらい合わない予定だったのだが、実際には1時間近く遅れてしまっていた。

毎日のパターンでは、歩いて5分の学校に弟を迎えに行く時間と重なってしまう為、スクール・バスで帰宅するベンは合鍵を使って部屋に入る。今日は弟の方にも一人で帰宅するように頼んでおいた。

僕は仕事からの帰り道、ベンが帰宅しているのを確認する為の電話を家にしたのだが応答が無く、不審に思っていた矢先の電話だった。いつもは何の問題もなく家でコンピューターに向かっているはずのベンが、何を思ったのかパニックを起こしてしまったらしい。ベンの帰宅後20分遅れで家に戻った弟が見たのは、アパートの前で泣き叫ぶベンだったというわけだ。

弟はアパート1階にある洗濯屋さんの電話を使って電話してきていた。ベンの声が背後に聞こえる電話にこちらがパニックになってしまいそうになる。ベンに変わってもらい、直に説明した。「ベン、一体どうしたんだよ?あと30分で戻るから泣くのをやめて弟と一緒に部屋に入りなさい!」

10分後地下鉄に乗る前に電話すると、「問題なくアパートの中に居る」との弟かえあの返事。落ち着きを取り戻し家に戻ると、何事も無かったかのようにベンがコンピューターに向かっている。

「ベン! 何でアパートの前で泣いたりするんだ! 外で泣いたらみんなに迷惑がかかるんだぞ!」持っていたベースアンプを床に叩き落として怒鳴ってしまった。出来ると思っていた事が出来ない事への怒りと、自分自身が取り乱してしまったことへの怖さが重なってしまっていた。

呆然と見守る弟を「本当は君が一番辛かっただろうね」と視界の隅に見る。弟に大変な思いをさせてしまった事も、近所の皆さんにまたしても迷惑をかけてしまったのも、すべてが許せなくなってしまっていた。

僕が怒るのを見て、当然のようにベンもパニックになってしまい、正確な理由を聞き出そうにも、支離滅裂な答えしか返って来ない。次の日に近所の人に謝りにゆくと、どうやらベンは一度鍵を使ってアパートに入ったのだが、何らかの原因でもう一度外に出たらしく、その後玄関のドアを叩いて泣き始めたとの事。

家に入れなかった訳でもなく、学校で何か特別な事情があった訳でもなく、未だにその理由は謎なのだが、今回も近所に住む人達の暖かい言葉に励まされた。僕は13歳になる自分の子を過信していたようで、口で伝えるだけでなく書面に残して部屋に置いておくといった更なる注意が必要だったのを反省する。

その日にしていた仕事が障害のある高齢者の病院でのコンサートだったのも、自分を皮肉に映し出す。「人の世話をする前に自分の息子をきちんと見たらどうだ」その挙げ句に怒鳴って叱りつけてしまうなんて最低じゃないか!



インターネットをしていると日本からのニュース。「高タンパクの食事をとり続けていると、ADやADHDになる可能性があり凶悪犯罪の原因にもなる」との番組を作ったテレビ局が謝罪文を掲載した。

「恐怖の食卓」というバラエティ番組だったそうだが、僕が心から思ったのは、自閉症とは違うものの、同じ様に謎が多く、そんな状況と毎日戦っている人達がいる障害を、簡単に食事を原因にして話を片付けてしまうという番組を作るというテレビ局の人達に、人思いやる気持ちというものがあるのだろうか?という事だった。

誰もがなりたくてなったわけでもない障害を、食事を変えて治るのなら、とっくに治しているだろうし、そう結論づけた医者の前には行列が出来るだろう。「母親の愛情が足りないから自閉症になる」とまことしやかに言われていた時代を彷彿とさせる内容だ。

関係する人が少ない分、納豆事件のような大事にはならないが、障害者に偏見を持たせる情報をわざわざテレビで放映するというのは、比較にならないくらい悪質で、おまけに納豆のように誰かが得をすることさえも無い。


ジャーナリズムの一端を担う、そういったテレビ番組を作る人達に、障害を持つベンを理解して助けてくれる、僕の近所の人々の愛までもを踏みにじる失礼な行動だということだけでも知ってもらいたいものだ。

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by gakuandben | 2007-04-03 09:55 | 自閉症に関して