ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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人耳に触れること
先日、日本で発売された土岐麻子さんというシンガーのアルバムに1曲だけ作曲で参加させて頂いた。

バンドではなく、完全に作曲という形での曲提供は初めての経験なのだが、やってみると実に楽しいもので、想像の中で歌っている人の声を追い、出来上がったものにゼロから考え出された歌詞がつく。

歌詞を書けない僕には、あっという間に物語が出来てしまうようなマジックで、完成したものを聴いてみると逆にこのストーリーのために曲が作られたような気さえしてくるのだった。

そんな風に感じさせてくれる歌詞と曲とのマッチングには、きっと素晴らしいアレンジのパワーがあるのだろう。出来あがった作品からは音楽的な共同作業の楽しさがたくさん伝わってくる。

初めて聴かせて頂いた時、思わず「音楽って楽しいなあ!」と言ってしまったのだが、本当にそんな気持ちにさせられる出来事だった。

音楽を聴きながらニヤニヤしてしまうことが良くあるが、それは自分が思う表現と、演奏者のした表現との間に共感できる部分があるからなのかも知れない。歌詞も含めて、共感の振動が聴いている人々に伝わってくれればと思う。



ベンは道で歌を歌い、ピカピカに磨かれたSUVからは、周りに地響きを起こさせるほどの音量でヒップポップが流れる。

この喜びを誰かに聴いてもらいたい。

ライブで演奏するよりもっと多くの人と、一度にいつでも楽しみをわかち合えるというのは、レコーディング作品を残すことの大きな意義であり、こういった機会を下さった土岐さん、スタッフ、ミュージシャンの方々に本当に感謝したい。



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                 8曲目「サーファー・ガール」です
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by gakuandben | 2007-11-29 02:55
Night Walker
子供にとっての夜の景色はそれだけでもエキサイティングなものなのだろう、夜の街で見る子供達は皆一様に生き生きとしている。ティーンの年代は夜の国への入り口で、友達と夜道を歩くだけでも大人な感じがしたものだ。

ベンも夜の街が大好きだ。きらきらと輝くサインや、ひんやりとした空気はベンの好きな物だらけなのだから無理もない。週末に仕事が無い夜は、ベンを「ナイト・ウォーク」に連れてゆく。

前回は、公園を通り過ぎてイースト・リバー沿いの高速道路を超えた遊歩道を歩いてみたのだが、夜に歩いてみると大人でさえかなりスリルのあるものだ。

同じ視線レベルで疾走してゆく車を右手に、左には真っ黒にうごめく川が迫る。アメリカにはこんなところに柵が無くても良いのかという場面に遭遇することが良くあるが、高速道路をまたぐ陸橋は川にせり出しているようで、階段の横には転落防止用の柵も無い。

ベンに近寄らないように声をかけると、「I don't want to die」と返事が帰ってきた。

真っ黒になって流れている川を眺めていると、治安の悪かった時代にはよく死体が流れて来たらしいと誰かが言っていたのを思い出し、見た人は本当に怖かっただろうと同情する。

それでも、新しい景色に感動したのかベンは家に戻る最中に「Dad, Thank you for doing night adventure trip」とお礼を言ってくれたのだった。

そんなナイト・ウォークに味をしめた僕は、自分の楽しみも兼ねて週末の夜のかけらを楽しみにゆく。

昨日は本屋にも行きたがっていたこともあり、夜11時まで開いているバーンズ・アンド・ノーブルスに歩いて行くことにした。

「ベン、ナイト・ウォークは危険だからな。酔っている人もいるし、ぶつかったりしたら大変なことになるから常に周りの人に注意して歩くんだぞ。」と言い聞かせ夜道を歩き出すと、いつものように手をちらつかせたり、不自然なアクションはあるものの、多少のコントロールの利いた歩き方だ。

街の光に照らされたベンは大人っぽく見えて、彼にもいつの日か友人と夜に外出したりすることもあれば良いなとふと考える。

土曜の夜の本屋は予想以上に盛況で、空いていたのは子供本のコーナーだけだったが、ベンなりに違った時間帯の本屋を楽しんでいたようだ。

床に座ったベンの前に「ウディ・アレンの本が欲しいのよ〜」とテンション高めに店員さんと話すおばさんが登場、僕は傍らで成り行きを静かに見守っていたが、おばさんの移動する先を邪魔する事も無く、うまくかわすことが出来た。

僕らには普通にある人との距離感も、こうした実際の経験から覚えさせないと、捉えることが難しく、平気で人にぶつかったり、場所を譲らなかったりすることがあるのだ。

帰り道は時間も遅くなり、あちこちのバーの前にはタバコを吸う人や、年齢確認のためのIDを出す人たちの列が出来たりして、賑やかな土曜日の夜は歩いているだけでも楽しい気分にさせてくれる。

僕らが通りがかったバーの前では、カップルが熱いキスを交わしていた。

ベンはすかさず「Man and woman kissing each other」と目の前の事実を言葉にしてしまう。ベンの正確極まりない注釈に、キスをしていた2人はパッと互いの口を離した。



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by gakuandben | 2007-11-19 14:55 | 自閉症に関して
I'll be seeing you
寒くなった途端にコートを着込み、ニューヨークの街は黒い人だらけになる。
それほどまでに、黒やダーク・カラーが好きなのは冬の街のイメージなのか?
もっとカラフルであっても良さそうなのに、暗い色を選ぶ。

公園に行けば人影もまばら。さらにサマータイムの終了も重なり、5時過ぎには真っ暗になってしまうのだ。

次男がミドル・スクールに進学をした夏休み後からは、一緒に公園にも行かなくなった。一緒に行かなくなった最後の日はいつだったのだろう?

そんなことを思いながら、アッパー・ウエストに駐車してから仕事場まで歩いてゆく途中に視界に飛び込んで来たのは、11年前にベンと2人でバスを待ったコーナーだった。

生まれて1週間後のチェックで黄疸と診断された次男は、マンハッタンのウエスト・サイドにある病院に入院する。イースト・サイドのアパートからベンを連れて、お見舞いに行く為のバスを何度か乗り換えたのがこのコーナー。

どんなに注意しても動き回る多動のベンを、ここに入っていなさいと押し込んだのが、駐車場の非常口。ドアと歩道の間にある狭く凹んだ部分が僕にとっての最大限のアイディアだった。

どうにもコントロールの利かない子供と、病気の子供。何だかとてつもなく不幸な気がしてしまい、バスに乗る頃にはもの凄い顔をしていたに違いない。

プレイヤーのスイッチが入ったように、病院に行ってからも弟の存在を全く気にかける様子の無いベンや、保育器の蛍光灯の下に干されたようになっている次男、その照射を均等にするため、数時間おきに角度を変え、ベッドでは無くリクライニングの椅子で2晩を過ごしている妻の事を思い出した。

そんな思い出を振り返ると同時に、何故か思い出したのがベンの生まれる前の頃。17、8年前に音楽学校のワークショップで知り合った友人たちの事だった。手探りの英語で何とかコミュニケートしていたあの頃は、話した事よりもその時の服装や表情の記憶が強い。


不思議な事は起こるもので、演奏を終え片付けをしていると最前列に座っていたお客さんが「Gaku, I used to play with you」と声をかけてくる。

見上げると、そこにはまさにあの頃一緒に演奏していたドラマーが微笑んでいる。その前に少し回想していたのが予習になったのか、顔を見た途端に名前が浮かんで来た。

「スティーブ?」と訊くと、背が高く金髪のアメリカ人らしいアメリカンである彼は、にやりと笑ってうなづいた。

昔話に始まり、いつの日か会わなくなってからの話をすると、お互いにその後すぐに子供が出来ており、彼の子供はベンより一つ年下の13歳、ギターが上手なのだそうだ。

人生の流れの中で、子供の存在というのは突然に太く強い絆を持った人の登場であり、子供の生まれる前の話というのは遠く山を越えた部分の話をしているような気分になるのだった。

それでも今の人間関係の線を辿れば、一本の糸は切れずに遠い昔の自分につながっている。

僕は特にベンの自閉症ついての話をするわけでもなく、ただ巡り会いや思いで話をひとしきりしたところで握手をして別れ、振り返ればたった今演奏したメンバーも、あの頃からのつながりでずっと一緒に演奏してきた仲間であることに気がついた。

真冬の公園のブランコ、大学の部室のドア、今は跡形も無いライブハウスの入り口。最後に見た風景の連続で糸はつながり、今見ている景色があった。

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by gakuandben | 2007-11-12 23:43
永遠の課題
ベンはパンツを汚さない方だと思う。逆に几帳面で、下着を汚した場合はすぐに取り替えるし、自分で洗って干してあったりもする。

僕に久々のピンチが訪れたのは、先日行われた子供向け音楽ビデオの撮影の時だった。

朝5時からスタッフが入り、準備を進めてあったスタジオに8時半に向かう。ビートルズのサージェント・ペパーズを彷彿とさせる衣装を合わせて、メイクを完了し撮影を開始。10人以上のスタッフが進行を見守る。

メイクまでして本格的に自分が映されるのは初めての経験で、撮影の合間には衣装の方がスカーフの位置を直したり、メイクの方が汗を拭き取ったりしてくれるのだ。

子供達と一緒に演奏するシーン、個々に動きのあるシーンと順調に進行してゆき、短い休憩を取る事になった。当然のように、休憩時間はトイレに行くことになる。朝飲んだコーヒが尿意を即し、待ってましたとばかりにトイレに飛び込む。

ここから先は男性なら容易に理解出来る事なのだが、汚らしい話でもあるので細かい描写は避け、結論を言うと衣装のパンツにシミをつくってしまったのである。

言い訳になってしまうが、経験上狭いトイレで慌てて用を足すと良く起こってしまうように思えるこの悲劇。普段なら、手荒いの水が跳ねたように見せかけてごまかす方法などで切り抜けるのだが、今回は勝手が違う。

生まれて初めて経験する自分の身なりに100%のアテンションの行き届いた環境にさらされている場所に、今からシミをつくったパンツで戻らなければならないのだ。

恐ろしいことに、ポリエステル系素材の赤色パンツは必要以上にくっきりと水分を黒く映し出し、まさにお手上げの状態。何故か英語で「Oh, Men」と呟きつつ、ペーパータオルで必死に拭き取り乾かすが、効果は全く無い。

トイレの滞在時間が5分を過ぎ、これといった打開策もないままドアを開けた。ここは、お茶目に「いや〜水が跳ねちゃって〜」とメイクの人にドライヤーで乾かせてもらうか? バレるまで知らないフリをするか。様々な思いが駆け巡る。

どちらにしても、このままカメラの前に立ったら10人分の目の前で、とてつもなく恥ずかしいことを指摘されてしまうのだろう。スカーフが曲がったって直す位なのだから、パンツのシミを見落とす筈がない。

何となく手でシミを隠しながら、みんなの休んでいるソファーの方へ向かうと、楽しそうにコーヒーを飲んでいる。「そうか、コーヒーをこぼしてしまったことにするのも良いな」とひらめいた直後に、「バンドの皆さんはもう少しお休みになりま〜す」の声。

見るとスタジオでは子供達が別のショットを撮影しており、時間がかかっているようなのだ。5分、10分と時間が経つうちに、シミもすっかりと乾いてきた。

ほっとして同じ衣装を着ているパーカッションの友人に、笑い話として話すと「Did you mess up !」と大笑いされる。それでも話せること自体、
本当に運が良かったと思い、僕はスリルのある体験をした直後の子供のように興奮して喋り続けていた。
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by gakuandben | 2007-11-06 05:15