ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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のような人
暖かくなってきたというのに、こんなに仕事が少なくて良いのだろうか?
季節労働者という訳でも無いのだが、僕のようなミュージシャンには時期や季節は大きな影響力を持つ。

浮き沈みが激しい分、沈んだときの対策として、レストランやバーでのちょっとした演奏や、生徒からのレッスン料は欠かせないものとなるのだが、毎週演奏させてもらっていたレストランは閉店し、週末に必ず声のかかった郊外のラウンジでも、バンドを入れるのを止めてしまった。

そんな訳で、ここ数年来必ず週末には何らかの仕事があったものが、ここ2、3ヶ月は殆ど家で過ごすようになっている。

勿論、金銭的にも緊迫感があるが、プールしてあるお金を注入して何とか凌いでいる状況。収支がマイナスになるのは気分が良くないが、実はそれよりもずっと精神衛生に悪いのが、楽器を人前で弾けない事なのだ。

あるミュージシャンが雑誌インタビューで言った。「楽器を演奏しないでいても平気なら、ミュージシャンにはならない方が良い、でも演奏しないと体調が悪くなるようならミュージシャンになるしかない」

どうやら、演奏する事は体の機能の一部となってしまったようで、面白いことにそれは人に向けたものでないとうまく発散出来ない類いのもののようである。

自分から出たメッセージがくるりと聴いている人を回って戻ってくる。

人の反応がすぐさまわかる仕事が面白く見えるのもこういう事なのかもしれない。誰だって、反応の見えないメッセージは送りたくは無いはずだ。

した事→喜んでもらえる事→お礼→お金、というのはとても体に良いことで、時にはお金の部分は無くても良くなってしまったりもする。

日本の新聞には細切れ雇用で所持金が100円になってしまった人の話があり、その人も自分の事を「自分のような人間」と言っていたそうだ。

「僕のようなミュージシャン」「自分のような人間」

それでは「のような人」が何なのかと考えれば、それは置かれた立場の低さから捨て鉢になっているようでもあり、ちょっと違ったところを歩いている人のようでもある。

記事を読んだ後に気がついたのは、「のような人」の気持を精一杯仕事にぶつける事。

仕事は無くても、「一日中音楽のことを考えた結果がメッセージになる」と信じて気持を落ち着かせる毎日なのだった。
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by gakuandben | 2008-04-30 14:16
Autism Awareness Month
オーティズム・アゥエアネスの月である4月は、一般の人に自閉症に関する認識を高めてもらう為のイベントが数多く行われている。

去年のこの時期に始まった「ロック・オーティズム」は音楽ケーブル局VH1のが主催しているのだが、その後も1年間ずっとスポットを流し続けていて、現在も続行中だ。

エアロ・スミスのスティーブン・タイラーやKISSのジーン・シモンズが真面目な顔をして自閉症の現状を伝えるこのスポットは、僕が感じたのと同じようにロック・ファンである親なら誰しも心強く思うに違いない。

こうした有名人の活動は、それに加えて一般の人へのアピールも絶大な効果があるだろう。サイトに併設されたコメント欄を読んでいると、その反応は手に取るようにわかる。

先週の日曜は、やはりケーブル局のコメディ・セントラルが主催した、ライブ中継のファンド・レイザーが行われた。

多くの有名コメディアンが登場して、募金を募るというものなのだが、かなりきわどい内容で、見ている方が心配になってしまうようなジョークや、放送禁止用語も連発されているような状態なのだが、合間に自閉症の現状を紹介するビデオなどが流れ、募金の趣旨は一貫して伝えられている。

コメディアン達のパフォーマンスも、それぞれが募金につながるようなメッセージを持たせてはいるのだが、それとは関係なくばかばかしさに笑えてくる内容でもあった。

シット・コムの人気番組オフィスで主演するスティーブ・カレルは100ドルの募金を例に100ドル分のカクテルとケーキを食べてみせたり、売り出し中のサラ・シルバーマンは自分に自閉症の従兄弟が居る事を冒頭でちょっとだけ触れるのだが、最後は体をはった芸で爆笑を誘う(ビデオ参照)。

しんみりとした雰囲気はどこにもなく何も考えないで見ていれば大物コメディアンの集結した豪華なショーなのだが、当事者である僕にとってはそういった気の抜け方も心地よく感じられるものがあった。全体にあたたかい思いやりの気持が流れているのがわかる。

とりあえずは何でも良いから知ってもらえることが有り難いのであって、逆に涙の感動ストーリーを番組にして見てもらえないより、人寄せ的な番組でもたくさんの人に見てもらえた方が興味の無い人にまで知ってもらえるチャンスがあると思うのだった。



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by gakuandben | 2008-04-18 02:34 | 自閉症に関して
Dream Boys
物事に対する反応が大袈裟な奴というものは居たものだが、今のベンは大袈裟を通り越して、自分で話を作り上げてしまう事がある。

セリフ(台詞)口調の受け答えでも、語彙数が確実に増えているのは喜ばしい事なのだが、その解説の先には事実に反することが含まれているのが大変迷惑なのだった。

学校では、先生から注意されたのをきっかけに前の席に座っている友達が、自分をからかっていると言い出したそうだ。「You are teasing me !」

何もやっていない友達は、さぞかし当惑したことだろうが、パニック状態になった時の八つ当たりとも言える被害妄想はさらに発展して、先週の事件を迎える。

ようやく整理のついてきた部屋に必要なものを買い足しに、週末の込み合ったIKEAにベンを連れて行った。

IKEAでのベンはいつも割と楽しくしていて、その日もミート・ボールのランチや、展示されている部屋のディスプレイを満喫しているようだった。ただ、順路にそってデザインされた店内は死角も多く、一瞬目を離したすきに姿が見えなくなったかと思えば、すぐ横にある部屋のベッドに横たわっていたりするといったことがしばしばある。

それでも何十回と通っていることもあり、見失っても何となく見つかるという甘えがあった。ショールームとマーケットが1階と2階に別れた構造はどこのIKEAも同じ作りをしているが、どちらの階も巨大なスペースであり、2階に居なければ1階にいるという事がすぐさま確認できるような場所では無いのだ。

独立心が出て来たのか、最近のベンは人の話を聞かずに自分の判断で行動してしまう事が多い。そんな事からも僕がトイレに行く前に「1階に降りてよい」と伝えたのだが、指示を聞いた事を確認しなかった事に問題があった。ベンが先に1階に行ったと信じていた僕らは、彼を2階に残したまま1階に移動してしまったのだった。

それでも10分ほどは危機感もなく、きっと先の方に居るのだろうと思っていたのがさらに時間が経つにつれ不信感に変わって来た頃に店内アナウンスがある。「ベンのご両親は近くの店員までご連絡ください」

!気の弛みというのは重なるもので、いつもなら持たせている携帯電話も家に忘れてきていた。皆で顔を見合わせるや否や店員に連絡すると、2階の子供部屋のショールームに居るとの事。

それぞれ別の経路を辿って駆けつけると、ベンは既に妻と一緒に居たのだが、彼女は「私が先に来て良かった」と言う。どうやら、ベンは係員の方と子供用ベッドに座って僕らの到着を待っていたのだが、その間「This is a disaster」(最悪の事態だ)、「Daddy going to punch me」(お父さんに殴られる)とか「I am scared」(怖いよ)などと言いながら泣いていたそうなのだ。

全身の力が抜ける思いがしたが、確かに彼女の言う通り。ベンの周りは通行量も多いところで皆立ち止まりはしないものの、僕は遠巻きに見ている人の興味の対象になっていたことには間違いなさそうだ。

現実と空想の世界を秒刻みで行ったりきたりしているように見えるベンは、迷子になった恐怖でパニックになり、その先に待ち受ける恐ろしい話を作り上げていたのだった。

アイスクリームを食べて機嫌良く車に乗り込むベンだったが、僕の脱力感は簡単には戻らずに、次の本屋の駐車場では昼寝をすることにした。


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by gakuandben | 2008-04-11 02:07 | 自閉症に関して
独り言の効用
小さくなった部屋の方に荷物を運び込む。なにしろ狭いので、インチ単位で家具のサイズを測り置き方を考えるのだが、気づくと一人で自問自答している。

独り言を言うようになると、どうにも癖になる。ベンに注意をしておきながら、最近では自分で独り言を言っていることが多いのに気がついた。

周りからみたら変に思われるから、という理由だけの為に我慢している独り言は自閉症であるベンにとっては、控えなければならない括弧たる理由の無いものなのだろう。

勿論、声が大きくなってしまったり、同時に手や体を叩いたりするのは確実に騒音になってしまうのだが、独り言自体にはそんなに罪は無い。というか、一歩街に出てみればどうだろう?街には独り言があふれているではないか。

日本語に置き換えれば、定番の「クソっ」、「まーどうしましょう」、直訳すれば「あばずれの息子」と日本なら舌打ちひとつで済んでいそうな事でも言葉となって表現されている。

考えてみると、瞬間の気持を表現した言葉は、それを言う事で自分は勿論他の人にまでも自分の気持を知らしめる事になっているのだが、実はそこがミソなのかも知れない。

「頭にきたぞ」とか、「びっくりしたなあ」という自分だけの気持を心にしまわずに、周囲の人に伝える作業をすることによって、直接の気持にかかる負担を軽くするためなのか。

それは別に聞いていてくれる人が居なくても、本能的に反応してしまう類いの衝撃緩和剤的な効果もあるのだろう。NYのでひときわ多く聞かれる汚い言葉も街のテンションの高さからすれば、いた仕方ない事なのかもしれない。

頭の中で起こった空想を言葉に出してしまうベンは、明らかに行き過ぎなのだが、言葉に出して音になるということが彼らなりの確認作業なのだろう。

確かに言葉にしてみると安心することはたくさんあって、何だか演奏がうまく行った安心感との共通点もある。

僕らミュージシャンもベンと同じようにいつも楽器に喋らせていた。


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by gakuandben | 2008-04-01 23:30