ニューヨークでミュージシャンとして活躍する一面、自閉症の子供と向き合う現実との戦い
by gakuandben
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推薦文・プロフィール
タケカワユキヒデさんから推薦を頂きました!
 「自閉症の子供を持つ親が勇気づけられるだけでなく、自閉症のことをよく知らない人たちにとっても、とても意味のあるエッセイだと思います。
 また、生のニューヨーク事情も知ることもできる。なんとも、幾重にもお得な素晴らしいエッセイです。

プロフィール
高梨 ガク
64年東京生まれ。ベーシスト。18歳でプロ・デビュー後、90年に渡米。ソウル、ジャズ系の音楽を中心に幅広い音楽活動を続ける。ポリスターより自己のバンド
『d-vash』(ディバッシュ)”Music Is”が発売中。
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Nuts の思い出
公立学校も年度末を迎え、例年のようにベンのクラス担任の先生にちょっとしたギフトを渡す。今年も色々と問題は起こったけれど、数年前にから比べれば、なんと平穏な学校生活となったことか。

小学校の低学年まではどうにも予想のつかない展開というのはよくあったのだが、極めつけはピーナッツアレルギーで、6歳くらいのときには救急車で病院に運ばれたこともあった。

エマージェンシールームに駆けつけると顔をパンパン膨らませたベンが、オリのように囲われたベッドでにこにこして立ち上がっていたのだが、先生方は大慌てでやたら早口で状況説明をして、こちらも半分くらいしか理解できなかった。

ピーナッツのアレルギーに関してはその後も何度か軽いものが起こったが、最初に起こったひどい反応以上のことはなく、本人や周囲も気をつけるようになったし、何よりも一般の風潮でピーナッツのアレルギーはよく取りだたされることが多いので、知名度の点での功績も大きいだろう。

航空会社では、ピーナッツのスナックをやめたり、一般の食品表示もナッツ類を警告表示する。自閉症だし、アレルギーの是非を判断するのは大変だろうと危惧していたのだが、チョコバーを食べるときなども本人が内容物を確認するようになり、ナッツの文字を見つけると口にしなくなった。

正確にはピーナッツ以外のナッツは問題が無いのだが、本人的に「危険」と解釈するのはナッツ類であり、一切口にしないのだった。だから後に何度か起こった軽い反応は、食事にピーナッツオイルが混ざっていたとか、ピーナッツを食べた友達の手の触れたお菓子を食べてしまったといったもので、レストランなどでもピーナッツの含まれるものはきちんと表示されているので安心だ。

キャンプや学校でEpi-Penというオートインジェクターのついた注射を持たさなければいけないのが、面倒なだけで、ピーナッツ・アレルギーに関して問題になることはほとんどない。

ベンがよく理解してくれたことも大きいが、問題があれば解決、改善すべく助けをさしのべてくれる環境にも感謝したい。

一段と大きくなりハグしがいのあるベンと別れて今日は飛行機に乗る。


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# by gakuandben | 2008-07-02 00:57
初夏のミステリー
あれだけコンピューターにかじりついていたベンが言い出したのは、

「Dad, I have to disconnect internet」

ええっ!?ディスコネクト(切断)って、インターネットが命のようなベンが何でまたそんな事を言い出したんだ?と最初はおもしろ半分に聞いていたのだが今日で3日目、 何十回と同じことを言われているうちにだんだんと具体的な問題が見えて来た。

ベンが言うのは、
1、ユーチューブなどの動画サイトをブロックして欲しい。
2、動画サイトは脳に良くない
3、コンピューターは消して、テレビや本を読むのが良い
4、健康に良いものを食べる

4は直接コンピューターに関係していないが、何かにつけてベンが言うことで問題を解決したいときの最後に必ず出る結びの言葉とも言える。

まあ、少しコンピューターから離れることになるから丁度良いなと思い放っておいたのだが、今日になってベンは 「I am scared」と言いながら泣き出した。

泣くとなると、事態は深刻だ。ベンに一体何を恐れているのかをしつこく聞き出してみると、どうやらプレイモービルに関したサイトから、問題が起こっているようなのだ。

プレイモービルといえば、ベンが8歳くらいまで熱中していたプラ人形のおもちゃなのだが、点の目がかわいらしく想像力をかきたてられる楽しい遊びで、大人でも多くのコレクターがいる。

話をつめてゆくと、ユーチューブで見たプレイモービルを使ったムービーの中に、問題のある内容のものがあったようで、「Children are crying」とか、「インターネット・ポリスに電話しなければいけない」などと言っていたことから、何かしらの悪い内容があった可能性がある。

とにかく、ベンはトラウマになるくらいの嫌な内容の動画を見て、動画サイト、そしてコンピューターまでもを恐れているようなのだ。コンピューターに「STAY AWAY」と張り紙をし、モニターには買い物袋をかぶせてから取れないようにセロテープで貼ってしまった。

何かがベンの頭のなかでぐるぐると回っているようでしまいには、「コンピューターの無い場所に行かなければならない」と言いながらソファで横になっているうちにうたた寝までしている。

魂が抜けたようになってしまったベンは少しして起きると、また同じ事を言い始めた。 「ベン、コンピューターは自分で操作するものだから見たくないものがあれば、見なければ良いだけなんだよ!」と強い口調で言い、コンピューターの所へ一緒に行くと、怖いと言いながらスイッチは入れる。

しばらく一緒に見ていると、だんだんと活気を取り戻してくるので、「ベン、もう大丈夫なのかい?」と聞くと、「Yeah, I am OK」とすっかり立ち直った様子でインターネットを楽しんでいる。それは、まるでお化けの恐怖に怖がる小さな子供を暗がりへ連れ出すかのようでもあった。

3日間続いた6月の真夏日の後に起きた不思議な事件は、今も真相がわからないまま。隣の部屋からは、ベンが動画サイトを楽しむ音が聞こえてくる。

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# by gakuandben | 2008-06-14 06:45 | 自閉症に関して
行ってしまったバスの後
小さな頃からあいまいだった、IとYOUの関係はベンの言葉の理解にとっての大きな難関のようで、今も続いている状態だ。

「Can I come with you ?」 (一緒に行ってもいい?)は頻繁に使われるフレーズだが、ベンは「Can I come with me ?」と言ってしまう。

確かに、「私」と「あなた」の関係は、主となる人がいてこそ成り立っているために主となる人が常に変わってしまい、He や she または名前のように普遍のものではないところに問題がある。


学校のバスに乗り遅れたベンを連れて、天気のよい朝の街を2人で歩く。雨上がりの清々しさも手伝ってか、ベンがナイスな事を言ってくれた。
「Dad, I love to walk to school with me」

?

「ベン、meじゃなくてyouだろ?」と言うと即座に言い直すのだが、これだけの年数を間違え続けているということは、よほど頑固な論理なのだろうと察する。もしかするとホントにyou無くてIで、ただ自分のことだけを言っているだけだったりするかも知れないなとも思ったこともあるが、指摘をすれば言い直すのでそういうことでもなさそうだ。

せっかく相手に対して良い事を言っているのに間違っていてはもったいない。名前と照会して説明しようと思い、「ベン、Iはベン、Youはガクなんだよ。もしダディが言ったらIはガク、Youはベンなんだ。」と力説すると「OK Dad」といつもの返事だが、考えて理解した様子でもない。

今回もベンが自分で理解するのを待つことになりそうだが、その目の奥には可能性の光も一杯入っていて、そんなナイスな一言を言ってくれるベンを愛おしく思うのであった。

春風にのった雨上がりの街の匂いは緑色で一杯だった。

                              

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# by gakuandben | 2008-05-28 14:24 | 自閉症に関して
活かされた時間
ベンはステージにあがると、にこにこしながらギターを弾きはじめた。3つのコードと音だけで演奏できる「ルイ・ルイ」だ。

2人だけの演奏だが、もう一人の子がコードを弾けるので、ベンは単音3つを弾くだけで何とかなっている。

幼稚園児から高校生までの自閉症児が一同に集まっての学芸会は、今年もそれぞれが出来る事を一生懸命にやっていた。

どうしたって比べることの出来ないこのパフォーマンスを見ていると、表現することの純粋な喜びが目の前に広がってくる。

車いすに乗った高校生の女の子は、アリシア・キースの「No One」を歌った。無心に歌う表情は幸せに満ちあふれていて、聴いている側の気持も彼女の喜びに合流してゆくのだった。

パフォーマンスを見ていると、本当にそれぞれに違った自閉症の症状があり、単に障害を持っているというだけの観点に加えて、それぞれの障害を考えさせられる場面でもある。

ある生徒は自閉症に関してのスピーチを何のよどみも無く読み上げ、先生やスタッフに感謝の辞を述べるが、客席ではステージに上がることもままならず、スタッフと一緒に座っていなければならない生徒もいるのだ。

だからクラスがあっても、それぞれの能力に合わせて結局は一人一人に対応してゆく必要があるわけで、先生方の努力も大変なものに違いない。

今後、自閉症教育の専門家がたくさん必要になってくるのは間違いないし、スタッフを減らさない為の予算を確保しておくことは、彼らの将来にとって絶対不可欠だろう。

幼稚園クラスの演技を見ていて、ベンが小さかった頃の事を懐かしく思い出す。皆がそれぞれに、それぞれの方法で成長してゆくのだった。                     

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# by gakuandben | 2008-05-22 03:57 | 自閉症に関して
のような人
暖かくなってきたというのに、こんなに仕事が少なくて良いのだろうか?
季節労働者という訳でも無いのだが、僕のようなミュージシャンには時期や季節は大きな影響力を持つ。

浮き沈みが激しい分、沈んだときの対策として、レストランやバーでのちょっとした演奏や、生徒からのレッスン料は欠かせないものとなるのだが、毎週演奏させてもらっていたレストランは閉店し、週末に必ず声のかかった郊外のラウンジでも、バンドを入れるのを止めてしまった。

そんな訳で、ここ数年来必ず週末には何らかの仕事があったものが、ここ2、3ヶ月は殆ど家で過ごすようになっている。

勿論、金銭的にも緊迫感があるが、プールしてあるお金を注入して何とか凌いでいる状況。収支がマイナスになるのは気分が良くないが、実はそれよりもずっと精神衛生に悪いのが、楽器を人前で弾けない事なのだ。

あるミュージシャンが雑誌インタビューで言った。「楽器を演奏しないでいても平気なら、ミュージシャンにはならない方が良い、でも演奏しないと体調が悪くなるようならミュージシャンになるしかない」

どうやら、演奏する事は体の機能の一部となってしまったようで、面白いことにそれは人に向けたものでないとうまく発散出来ない類いのもののようである。

自分から出たメッセージがくるりと聴いている人を回って戻ってくる。

人の反応がすぐさまわかる仕事が面白く見えるのもこういう事なのかもしれない。誰だって、反応の見えないメッセージは送りたくは無いはずだ。

した事→喜んでもらえる事→お礼→お金、というのはとても体に良いことで、時にはお金の部分は無くても良くなってしまったりもする。

日本の新聞には細切れ雇用で所持金が100円になってしまった人の話があり、その人も自分の事を「自分のような人間」と言っていたそうだ。

「僕のようなミュージシャン」「自分のような人間」

それでは「のような人」が何なのかと考えれば、それは置かれた立場の低さから捨て鉢になっているようでもあり、ちょっと違ったところを歩いている人のようでもある。

記事を読んだ後に気がついたのは、「のような人」の気持を精一杯仕事にぶつける事。

仕事は無くても、「一日中音楽のことを考えた結果がメッセージになる」と信じて気持を落ち着かせる毎日なのだった。
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# by gakuandben | 2008-04-30 14:16
Autism Awareness Month
オーティズム・アゥエアネスの月である4月は、一般の人に自閉症に関する認識を高めてもらう為のイベントが数多く行われている。

去年のこの時期に始まった「ロック・オーティズム」は音楽ケーブル局VH1のが主催しているのだが、その後も1年間ずっとスポットを流し続けていて、現在も続行中だ。

エアロ・スミスのスティーブン・タイラーやKISSのジーン・シモンズが真面目な顔をして自閉症の現状を伝えるこのスポットは、僕が感じたのと同じようにロック・ファンである親なら誰しも心強く思うに違いない。

こうした有名人の活動は、それに加えて一般の人へのアピールも絶大な効果があるだろう。サイトに併設されたコメント欄を読んでいると、その反応は手に取るようにわかる。

先週の日曜は、やはりケーブル局のコメディ・セントラルが主催した、ライブ中継のファンド・レイザーが行われた。

多くの有名コメディアンが登場して、募金を募るというものなのだが、かなりきわどい内容で、見ている方が心配になってしまうようなジョークや、放送禁止用語も連発されているような状態なのだが、合間に自閉症の現状を紹介するビデオなどが流れ、募金の趣旨は一貫して伝えられている。

コメディアン達のパフォーマンスも、それぞれが募金につながるようなメッセージを持たせてはいるのだが、それとは関係なくばかばかしさに笑えてくる内容でもあった。

シット・コムの人気番組オフィスで主演するスティーブ・カレルは100ドルの募金を例に100ドル分のカクテルとケーキを食べてみせたり、売り出し中のサラ・シルバーマンは自分に自閉症の従兄弟が居る事を冒頭でちょっとだけ触れるのだが、最後は体をはった芸で爆笑を誘う(ビデオ参照)。

しんみりとした雰囲気はどこにもなく何も考えないで見ていれば大物コメディアンの集結した豪華なショーなのだが、当事者である僕にとってはそういった気の抜け方も心地よく感じられるものがあった。全体にあたたかい思いやりの気持が流れているのがわかる。

とりあえずは何でも良いから知ってもらえることが有り難いのであって、逆に涙の感動ストーリーを番組にして見てもらえないより、人寄せ的な番組でもたくさんの人に見てもらえた方が興味の無い人にまで知ってもらえるチャンスがあると思うのだった。



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# by gakuandben | 2008-04-18 02:34 | 自閉症に関して
Dream Boys
物事に対する反応が大袈裟な奴というものは居たものだが、今のベンは大袈裟を通り越して、自分で話を作り上げてしまう事がある。

セリフ(台詞)口調の受け答えでも、語彙数が確実に増えているのは喜ばしい事なのだが、その解説の先には事実に反することが含まれているのが大変迷惑なのだった。

学校では、先生から注意されたのをきっかけに前の席に座っている友達が、自分をからかっていると言い出したそうだ。「You are teasing me !」

何もやっていない友達は、さぞかし当惑したことだろうが、パニック状態になった時の八つ当たりとも言える被害妄想はさらに発展して、先週の事件を迎える。

ようやく整理のついてきた部屋に必要なものを買い足しに、週末の込み合ったIKEAにベンを連れて行った。

IKEAでのベンはいつも割と楽しくしていて、その日もミート・ボールのランチや、展示されている部屋のディスプレイを満喫しているようだった。ただ、順路にそってデザインされた店内は死角も多く、一瞬目を離したすきに姿が見えなくなったかと思えば、すぐ横にある部屋のベッドに横たわっていたりするといったことがしばしばある。

それでも何十回と通っていることもあり、見失っても何となく見つかるという甘えがあった。ショールームとマーケットが1階と2階に別れた構造はどこのIKEAも同じ作りをしているが、どちらの階も巨大なスペースであり、2階に居なければ1階にいるという事がすぐさま確認できるような場所では無いのだ。

独立心が出て来たのか、最近のベンは人の話を聞かずに自分の判断で行動してしまう事が多い。そんな事からも僕がトイレに行く前に「1階に降りてよい」と伝えたのだが、指示を聞いた事を確認しなかった事に問題があった。ベンが先に1階に行ったと信じていた僕らは、彼を2階に残したまま1階に移動してしまったのだった。

それでも10分ほどは危機感もなく、きっと先の方に居るのだろうと思っていたのがさらに時間が経つにつれ不信感に変わって来た頃に店内アナウンスがある。「ベンのご両親は近くの店員までご連絡ください」

!気の弛みというのは重なるもので、いつもなら持たせている携帯電話も家に忘れてきていた。皆で顔を見合わせるや否や店員に連絡すると、2階の子供部屋のショールームに居るとの事。

それぞれ別の経路を辿って駆けつけると、ベンは既に妻と一緒に居たのだが、彼女は「私が先に来て良かった」と言う。どうやら、ベンは係員の方と子供用ベッドに座って僕らの到着を待っていたのだが、その間「This is a disaster」(最悪の事態だ)、「Daddy going to punch me」(お父さんに殴られる)とか「I am scared」(怖いよ)などと言いながら泣いていたそうなのだ。

全身の力が抜ける思いがしたが、確かに彼女の言う通り。ベンの周りは通行量も多いところで皆立ち止まりはしないものの、僕は遠巻きに見ている人の興味の対象になっていたことには間違いなさそうだ。

現実と空想の世界を秒刻みで行ったりきたりしているように見えるベンは、迷子になった恐怖でパニックになり、その先に待ち受ける恐ろしい話を作り上げていたのだった。

アイスクリームを食べて機嫌良く車に乗り込むベンだったが、僕の脱力感は簡単には戻らずに、次の本屋の駐車場では昼寝をすることにした。


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# by gakuandben | 2008-04-11 02:07 | 自閉症に関して
独り言の効用
小さくなった部屋の方に荷物を運び込む。なにしろ狭いので、インチ単位で家具のサイズを測り置き方を考えるのだが、気づくと一人で自問自答している。

独り言を言うようになると、どうにも癖になる。ベンに注意をしておきながら、最近では自分で独り言を言っていることが多いのに気がついた。

周りからみたら変に思われるから、という理由だけの為に我慢している独り言は自閉症であるベンにとっては、控えなければならない括弧たる理由の無いものなのだろう。

勿論、声が大きくなってしまったり、同時に手や体を叩いたりするのは確実に騒音になってしまうのだが、独り言自体にはそんなに罪は無い。というか、一歩街に出てみればどうだろう?街には独り言があふれているではないか。

日本語に置き換えれば、定番の「クソっ」、「まーどうしましょう」、直訳すれば「あばずれの息子」と日本なら舌打ちひとつで済んでいそうな事でも言葉となって表現されている。

考えてみると、瞬間の気持を表現した言葉は、それを言う事で自分は勿論他の人にまでも自分の気持を知らしめる事になっているのだが、実はそこがミソなのかも知れない。

「頭にきたぞ」とか、「びっくりしたなあ」という自分だけの気持を心にしまわずに、周囲の人に伝える作業をすることによって、直接の気持にかかる負担を軽くするためなのか。

それは別に聞いていてくれる人が居なくても、本能的に反応してしまう類いの衝撃緩和剤的な効果もあるのだろう。NYのでひときわ多く聞かれる汚い言葉も街のテンションの高さからすれば、いた仕方ない事なのかもしれない。

頭の中で起こった空想を言葉に出してしまうベンは、明らかに行き過ぎなのだが、言葉に出して音になるということが彼らなりの確認作業なのだろう。

確かに言葉にしてみると安心することはたくさんあって、何だか演奏がうまく行った安心感との共通点もある。

僕らミュージシャンもベンと同じようにいつも楽器に喋らせていた。


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# by gakuandben | 2008-04-01 23:30
Costco な生活
コスコ(日本ではコストコと読むそう)はアメリカで始まった会員制の一般消費者向け卸売り店だが、これだけ物価高になると、普通のスーパーのものは何でも高く思えて、コスコで買ったものでなければ割安感を感じることは無いくらいの状況だ。

そんなわけで、近所のスーパーで買い物をするのを極力控えて、週末に行くコスコが頼りでウチの家計は成り立っている。

ただ、問題はどうしても1度に買う量が増えてしまう事。ほとんどの商品が数のまとまったパッケージになっているので、買うと同時にストックをすることになり狭いアパートでは置き場所にさえ苦労する。あまり食べない食品などは腐らせてしまうし、コスコでの買い物は、結構頭を使うのだ。


そういった真剣勝負な買い物の間、ベンは本とDVDのコーナーで好きにさせているのだが、時々売られているソファの展示品にどっかりと座って本を読んでいたりすることもあって、人から干渉されない楽しい場所のようだ。

1月ほど前のこと、買い物を完了して本のコーナーにベンを探しに行くと、目を輝かせて「I found classic book series」と言ってボックスに入ってセットになった小学生向きの本を差し出して来る。

古くからある、子供本のスタンダードらしいシリーズはシャーロック・ホームズやハイジなどの作品が大きめの字の本文とイラスト入りで構成されている。 文章のページの隣は必ずイラストなので、絵本から普通の本への過渡期を意識した作りがベンの心を捉えたのだろうか?

「買うのかい?」と訊くと「No,I don’t want to」と言うのだが、これは好きすぎて興奮を抑えきれない場合に起こる現象で、実は欲しいという事が殆どなので、「ああそう」と言いながらショッピングカートに入れる。

案の定、店を出るや否や、本を手にとって嬉しそうにしているのだが、僕はベンか本当にこの本を読むのかは半信半疑でいたのだった。

ところがその夜から寝る前にその本を取り出して読んでいる。何故か読んでいる本を毎日必ず学校へ持ってゆくようになり、朝にはベッドの横に落ちた本を拾い上げてバックパックにしまい込む。見ると本にはきちんとしおりが挟んであり、本の扱いが僕より格段に良いではないか。

1週間ほど前には一冊目の本を読み終えた事を報告しに来た。「I finish to read Sherlock Holmes, I am going to read Heidi(ハイジ) next !」と嬉しそうに言っている。

8冊セットで10ドルちょっとのまとめ買いは、安いばかりでなく、次を期待するベンの楽しみをもたらしてくれた。


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# by gakuandben | 2008-03-06 14:47 | 自閉症に関して
Travelin' Light
3日間フィラデルフィアでの子供ショーの仕事の最終日、子供たちを連れてゆくことにした。

朝の8時前には出発。車で片道2時間ほどの距離だが、連続するとなかなかキツい。3日目に子供と一緒というのも居眠り運転防止にもなり、楽しくドライブすることが出来て、子供が成長してくれたことの有り難みを感じる。

ベンはいつもと違った街に行く事をとても楽しみにしてくれた。ベンは都会なら基本的に何処でもハッピーで、少なくとも田舎やリゾートに行くよりは安全な選択なのだろう。

仕事先の子供博物館でも大人しくしていてくれて、僕に代わってベンを見ていてくれる弟のヘルプもあり無事に仕事を終える事が出来た。3回のショーの合間には、もちろんフィリーチーズステーキをお昼に食べて大満足の様子。

片付けを終えると4時を過ぎてしまったが、隣の博物館でスターウォーズ展ツアーをやっていたので見てゆく事にした。

弟の方が大ファンであることもあり、こんなにすばらしい特別展示を見逃すわけにはゆかない。ベンはあまり好きでは無いのだが、映画が好きな事には変わりないので嫌がらずに着いてきてくれそうだ。入場券は6時からのものしかないのだが、待つのを覚悟で買う。

いつもなら待つというだけで躊躇してしまうところだが、今日は弟の方にも何か楽しみをつくってやりたいという気持ちも大きく、ベンにも納得してもらうつもりでの決断だった。

ベンが途中で騒ぎだしたら弟だけ残して先に出れば良いとか、色々な事を考えるのだが、そんな心配は全く無用で特別なツアーやレクチャーがあるわけでもなく、自由に展示物を見て回るだけのもので2人ともそれぞれに楽しんでいたようだ。

ハングリーを連発し始めたベンに急場しのぎのM&Mを与え、夕食は高速のサービスエリアで買う。ヘッドライトが行き交う車の中でチキンをモサモサと食べながら、アメリカ中をドライブして生活するキャラバンファミリーの気分になった。

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                      ロッキーの階段を上る
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# by gakuandben | 2008-02-25 15:13